コロナ禍で中小のM&Aに変化 アプリと旅館を買収した写真館「今が事業拡大のチャンス」<まちビズ最前線>

2021年9月5日 05時50分
 企業・事業の合併や買収(M&A)に変化が起きている。ITとは無縁だった中小企業が、人と人が対面しない非接触型でも展開できるIT事業を買収する動きが増え始めた。コロナ禍の「新しい日常」への対応で、ある写真館はスマートフォンアプリ事業と老舗高級旅館を買収。専門家によると、非IT企業がIT事業を買収する事例は、コロナ前に比べて2.5倍増という。(坂田奈央)

小野写真館の小野哲人社長=小野写真館提供

◆「会社が生き残る道だと思った」

 「M&Aで次なる事業の柱を早く作ることが、会社が生き残る道だと思った」。茨城を中心に東京や神奈川、千葉に約30店舗を展開する小野写真館(茨城県ひたちなか市)の小野哲人社長(46)は振り返る。
 昨年の4~5月、コロナ禍で主軸の結婚式関連事業の売り上げが前年より約8割減った。危機感から「事業モデルを変えなければ」とM&Aの模索を始めた。
 コロナ禍で必要性を痛感した非接触型の事業として、今年6月にスマホアプリ「BABY365」を買収した。スマホで子どもの写真を撮りためて1冊の本にできるアプリで、年間平均2万人が利用する。コロナ禍でも安定的な収益を見込める写真関連事業だ。

スマホで撮りためた写真を1冊の本にできるアプリ「BABY(ベイビー)365」=小野写真館提供


◆コロナ禍が大きな契機に

 同アプリの運営会社ポーラスタァ(東京都港区)の高沖清乃社長(46)は、利用者の増加とともに大切な写真データを預かる体制に不安を抱えていた。利用者が急増した2年ほど前から事業譲渡を視野に入れ始め、コロナ禍が大きな契機に。高沖さんが当面は子育てに集中したい事情もあった。
 3人の子育て経験をもとに生み出したアプリに共感してくれる経営者を求めていた高沖さん。小野さんが子どもに向き合う時間を創出するアプリの趣旨に共鳴したことから、10社超の競合から買収先に選んだ。

小野写真館が買収した静岡県河津町の老舗旅館で提供しているグループ貸し切りの結婚式=小野写真館提供


◆老舗旅館にも見出した商機

 小野さんは昨年10月、静岡県河津町の老舗旅館も買収した。コロナ禍で宿泊業も厳しいが、「広い敷地に4部屋だけ」にひらめいた。宿を貸し切りにした結婚式や七五三、還暦祝いなど密を避けた節目の祝い事の場に活用。景観を生かしスタジオいらずのフォトウエディング事業につなげた。
 異業種の特徴を取り入れ事業を拡大させた小野写真館。9月期決算で売上高がコロナ前の水準(約16億円)に回復する見込みだ。

◆一本足打法から多角化へ

 企業のM&Aの助言会社レコフ(東京)によると、今年1~7月のM&A件数は2473件と過去最高で、コロナ前より高い水準で推移。特に中小企業の動きが活発だ。
 M&A仲介サイト「ビズリーチ・サクシード」の前田洋平事業部長は、「一本足打法だった企業がコロナ禍で多角化する事例が増えている」と指摘した。

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