コロナ対策で国民の信頼失った菅首相 「矛盾したメッセージ」で緊急事態宣言の効果薄く

2021年9月4日 06時00分

首相官邸を出る菅義偉首相=3日、永田町で

 菅義偉首相が今月末での退陣を表明した。就任から間もなく1年。一貫して「新型コロナウイルス対策が最優先」を掲げながら、収束の道筋を付けられなかった。経済活動や東京五輪・パラリンピック開催を重視するあまり、ちぐはぐな対応を繰り返し、国民の信頼を失っていった。(清水俊介、木谷孝洋)

◆当初から「小出し」「後手」の批判

 首相は自民党総裁選への不出馬を表明した3日、記者団に「コロナの感染拡大防止に専念したい」と理由を説明。これまでと同様に「コロナ対策が最優先」の姿勢を示したが、求心力を失った首相が1カ月足らずの任期で有効な手を打てるとは思えない。
 首相のコロナ対策には、当初から「小出し」「後手」の批判が付きまとった。
 就任間もない昨年11月、感染拡大局面を受け、専門家は首相らが経済へのテコ入れのため重視する観光支援事業「Go To トラベル」の見直しや停止を提言した。だが、首相は停止地域を少しずつ広げる対応を選び、全国での停止を決めたのは3週間後。人出を抑える対応が遅れ、年明けの東京都などへの緊急事態宣言発令につながった。
 東京五輪・パラリンピックを意識し、緊急事態宣言の期限設定にも影響したとの見方も強い。今年3月、東京などへの宣言解除に踏み切ったのは、聖火リレー開始の直前。すぐに感染が再拡大し、3週間後にまん延防止等重点措置の適用、さらには緊急事態宣言への移行を余儀なくされた。
 「安全・安心な大会」と強調しながら明確な根拠を示さず、感染も抑え込めずに宣言下での五輪開幕を迎えた。五輪開催は、感染拡大防止に協力する国民の警戒感を緩めかねず、専門家からは「矛盾したメッセージ」(政府対策分科会の尾身茂会長)と懸念の声が上がったが、首相は五輪と感染拡大の因果関係は「ない」と言い切った。

◆強硬策に与党からも「やりすぎ」

 今年になって東京には緊急事態宣言が3度発令され、首相の記者会見は計14回に上った。そのたびに「必ず事態を改善させる」「感染拡大を2度と起こしてはいけない」と意気込みを口にしながら、結果は伴わなかった。
 強い口調とは裏腹に、言葉を尽くして丁寧に説明する姿勢を欠き、国民に失望が広がって内閣支持率は当初の60%台から30%前後に急降下。緊急事態宣言は「最後のカード」(政府高官)だが「宣言慣れ」もあって効果は薄れている。
 酒類の提供停止に応じない飲食店に対し、取引がある金融機関から働き掛けてもらう強硬策を打ち出したが、与党からも「やりすぎだ」(自民党幹部)などの批判が噴出して撤回。病床逼迫に対応するため、重症患者以外は原則として自宅療養とする入院制限の方針も軌道修正を迫られるなど、失態も目につき、政府内には手詰まり感も漂う。

◆「ポスターをはがしていいよ。おれ人気ないだろ」

 首相の楽観的な発信も感染を抑えられない一因だ。
 専門家は「危機感の共有」の重要性を指摘したが、直近の会見でも「明かりが見え始めている」と発言し、世論の反発を浴びた。最大の根拠にするワクチン接種は進んでいるが、感染力の強いデルタ株の猛威で「抑え込むのは容易ではない」と認めざるを得なくなっている。
 首相は最近、周囲に弱気な発言を漏らすようになった。衆院選が迫り、首相と並んだポスターを街中に張る自民党議員に電話し「ポスターをはがしていいよ。おれ人気ないだろ。張り替えろ」と伝えた。

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