ネット投票導入へ、推進法案の意義は? 筆頭提出者・中谷一馬衆院議員に聞く

2021年9月5日 06時00分
 先の通常国会で立憲民主、国民民主両党が共同提出した議員立法「インターネット投票の導入の推進に関する法案」の内容や意義について、筆頭提出者の立民の中谷一馬衆院議員に聞いた。(川田篤志)

ネット投票の実現について話す立憲民主党の中谷一馬衆院議員

 なかたに・かずま 1983年生まれ。川崎市出身。デジタルハリウッド大学院修了。首相秘書、神奈川県議を経て、2017年衆院選で初当選。立民のデジタル政策PT事務局長。

 ―法案の狙いは。
 「投開票作業における行政コストの効率化や投票の利便性を飛躍的に向上させるメリットもあるが、一番は憲法で保障された参政権を守ることだ。離島や山間部に住む人、病気や障害で投票所までの移動が困難な人もネット投票が可能になれば、全ての有権者の投票機会を等しく確保することにつながる。コロナで明らかに選挙に行けない人たちがいて、投票権をどう守るかを国会議員として考えなければいけない」
 ―提出に至った経緯は。
 「2017年10月の前回衆院選の後から、党内の若手でネット投票ができるような国にしたいと勉強会を重ねてきた。18年5月には検討チームを発足させ、本格的な議論を始めた。不正投票や『投票の秘密』をどう守るかなどの課題について、IT専門家らとも協議し、丁寧な説明を心掛けて先輩議員とも意識の共有を図ってきた。約30回の会議を重ねて、苦節3年でようやく提出できた」
 ―法案の内容は。
 「政府内に推進会議を設けて制度や技術上の課題を検討した上、法施行後1年をめどに実施法を改めて提出し、25年の参院選での導入を目指す。従来の紙での投票をベースに、ネットの活用を追加するイメージだ。公示翌日から投票日前日まで昼夜問わずどこでも投票できることなど、利便性向上に関する6つの条件と、選挙の公正と信頼確保に関する6つの条件を盛り込んだ。これを基に党派を超えて議論したい」
 ―投票用紙との併用ではコストがかかるのでは。
 「鉄道会社が交通ICカードを導入した時も切符と併用させた。導入初期はダブルコストになるが、時間がたつと業務が効率化され、多くの人が便利だからとネット投票に移行していくと考えている。国政選挙でネット投票を導入しているエストニアではネット投票の利用者が全体の4割で、経費は6割削減された」
 ―導入目標を25年の参院選にした理由は。
 「解散時期が読みづらい衆院選と違い、目標となる時期の逆算がしやすく、制度の設計もしやすい。実証実験を経て段階的な実施が必要だと考えており、25年より前に在外投票やコロナ患者に限定して実施することも視野に入る」
 ―なぜ最初から実施法を出すのではなく、プログラム法にしたのか。
 「民主主義の根幹である選挙のルールを大きく変える法案なので、みんなで理解を深めていくプロセスが大切。慎重派は何に不平や不満があるのか、それをどのように解決するのか、丁寧すぎるぐらい議論を重ねる必要があると考えた」
 ―不正投票などの課題の解決策は。
 「本人確認の手段としてデジタル署名という認証方法を使う。エストニアなどでもデジタル署名が破られたという事例は現在までない。データ管理では、改ざんが困難でシステムダウンが起きにくいブロックチェーンの活用が考えられる。ブロックチェーンを活用した電子投票システムは既に韓国などで開発されている。サイバー攻撃などを想定したセキュリティー対策や、投開票システムの安定的な稼働についてはしっかりとコストをかけて対策したい」
 ―高齢者やネット弱者への対策は。
 「投票の操作方法を伝える動画配信や問い合わせ先となるコールセンター設置、役場でのセミナー開催などを行う必要がある。ネット投票は若者のための政策と錯覚されがちだが、エストニアでは若年層より高齢者層の投票率が相対的に高くなった。本当は投票したいけど体調不良や地理的要件のせいで投票できなかった人の活用が進んだ証左だと思う」
 ―与党にはネット投票導入に慎重な声もある。
 「現行の選挙ルールで多数を占める与党として、ゲームのルールが変わることを嫌う傾向はあると推察する。ネット投票の導入には一長一短があるが、有権者の利便性向上や参政権の保障を考えたら導入するメリットがどう考えても上回る。与野党の利害を超えて丁寧に議論したい」
 ―投票用紙による投票がなくなることが理想か。
 「紙をなくしたいとは全く思っていない。紙があったほうが良いという人もおり、みんなが納得できる参政権の多様化を実現することが大切。時代のニーズにあった改善を提案し続けたい」

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