<民なくして>「遺骨の混じった土砂を海に捨てるなんて…」辺野古新基地建設、説明しない政治に県民怒り

2021年9月5日 06時00分
 終戦76年の今年8月15日、東京・九段北の靖国神社。沖縄戦の犠牲者の遺骨を40年近くボランティアで拾い続けている具志堅隆松たかまつさん(67)=那覇市=の姿があった。米軍普天間ふてんま飛行場(沖縄県宜野湾ぎのわん市)の移設に伴う名護市辺野古へのこでの新基地建設で、多くの戦没者の遺骨が眠る沖縄本島南部の土砂を埋め立てに使う政府の計画について、本土の人に知ってほしいと上京した。政府から地元への説明は一切なく「辺野古に賛成、反対以前に、遺骨の混じった土砂を海に捨てるなんて人道上の重大な問題だ」と、具志堅さんは通行人らに訴えた。(山口哲人)

◆地元に事前説明なし

 新基地建設を推し進めた安倍政権時代、官房長官として主導した菅義偉首相は今月末に退陣する。だが、具志堅さんは「誰が首相になっても沖縄政策はそのまま踏襲される」と見通す。
 本島南部は沖縄戦の激戦地。県平和祈念財団分室のまとめでは、県全体で2825柱の遺骨が見つかっておらず、今も多くが南部で収骨されている。
 政府が遺骨混じりの土砂を埋め立てに使う計画を決めたのは昨年4月。海底が地盤改良工事を必要とするほど軟弱だと分かり、県に工法変更などを申請するのに合わせ、県外中心だった採取場所に本島南部の糸満市と八重瀬やえせ町を追加した。
 書類を提出した防衛省沖縄防衛局は対外的に詳細を明かしていない。県民が知ったのは約3カ月後の地元紙報道。9月、文書は公開されたが、膨大な申請書に添付された書類の1枚に、追加された土砂採取場所の地名と地図が掲載されていただけ。岸信夫防衛相は「申請に際し、自治体や地域住民に事前の説明を行う必要はない」と切り捨てる。

◆県民の声に耳を貸さず

 説明を尽くさない政府の態度は安倍政権時代から変わらない。日米政府は「辺野古移設は唯一の解決策」と繰り返し確認。故翁長雄志おながたけし前知事が法的な権限を駆使し建設阻止に動いても対抗措置で封じた。2019年2月の県民投票で新基地反対が70%を超えても、官房長官として翁長氏と対峙たいじした菅首相は「地元の理解、協力を得られるよう粘り強く説明しながら取り組んでいく」と突き放した。
 本島南部の土砂採取も、政府が県民の声に耳を貸さず工事を進める流れの中にある。政府は工事を加速させる狙いから、8月に土砂の陸揚げに利用できる新たな護岸の建設に着手した。
 沖縄の自然を次世代に引き継ぐ運動を展開する市民団体「沖縄環境ネットワーク」世話人の桜井国俊沖縄大学名誉教授(環境学)は菅首相の退陣後も、政府が口をつぐむ「真実」を掘り起こし、世論に問う草の根活動が重要だと自らに言い聞かせる。
 「はなから説明があるなんて期待していない。沖縄の環境を守るため、私たちはアンテナを張って、県民と共有する役割がある」

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