[わが家の洗濯記(せんたくき)] 名古屋市守山区 安原順子(50)

2021年9月5日 07時33分

◆わたしの絵本

イラスト・まここっと

◆300文字小説 川又千秋監修

[娘の授業参観日] 愛知県西尾市・無職・67歳 市川正俊 

 明日は、娘が通う中学校の授業参観日。
 母親の私が「明日、学校へ授業を見に行くからね」と言うと、「恥ずかしいから、絶対来ないでよ」と娘は怒った。
 「大丈夫よ。誰のお母さんかは、どの子にも分からないから」
 私はそう答えた。プレッシャーを感じたのか、娘は夜遅くまで何度も教科書を見直していた。
 翌日、娘は、教室に入ってきた私を見て驚いていたが、その後は落ち着いて授業に取り組んでいた。
 授業を終えて廊下に出てきた娘に向かって、私はこうささやいた。
 「堂々としてたじゃないの」
 「本当にお母さんが来るとは思わなかったなあ」
 「だって、幼い頃の夢がかなって先生になった娘が、どんな授業をしているのか見たかったのよ」

 教室内に独特の緊張感が漂う当日。参観する方も、される方も普段は意識しない視線を感じて、そわそわ、どきどき。ただし、この場合は、お互い、ちょっと胸を張りたくなる気分かもしれません。

[不測の事態] 埼玉県朝霞市・パート・67歳 大坪秀樹 

 数年前の夏の夕方、僕は公園を散歩していた。
 その時、靴の中に何かが入った。
 僕は、近くにあった百日紅(さるすべり)の木の横で靴を脱ぎ、それを木の幹にトントンとぶつけて、中のものを取り除こうとした。
 すると、その衝撃で、何かがポトリと地面に落ちた。
 「ヤバい!」という声が聞こえた。
 見ると、それは黒い甲虫(かぶとむし)だった。
 甲虫は大慌てで枯れ葉の中に姿をくらました。
 周りに人影はなかった。
 甲虫も度を失うと人の言葉を発するらしい。
 その後、百日紅が花を咲かせる頃になると、僕は時々、その木をたたいてみたけれど、甲虫は二度と姿を現すことはなかった。
 本当の話だよ、これは。

 ちょっと不思議な夏の体験。ですが、それは、本当に甲虫の声だったんでしょうか? 「おい、何度も俺をたたくな! 花が散っちゃうじゃないか」というつぶやきが聞こえていたのかもしれませんよ。


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