長寿研の支援プログラム「もの忘れ教室」 介護者の抑うつ軽減を立証 各自のケース、理解助ける

2021年9月8日 07時27分

グループワークで行われる「もの忘れ教室」=愛知県大府市で(国立長寿医療研究センター提供)

 国立長寿医療研究センターもの忘れセンター(愛知県大府市)は、認知症患者を介護する家族向けに考案した支援プログラム「もの忘れ教室」が、介護者の抑うつ症状の軽減や満足感の向上などの効果を持つことを明らかにした。欧米以外では初の科学的な立証で、日本老年医学会の公式英文誌で7月に発表した。プログラムの解説動画を公開し、普及を図っている。 (編集委員・大森雅弥)
 もの忘れ教室は一回九十分、全六回のプログラムを三カ月かけて実施。最初の二回で認知症や介護の基礎知識について説明を受けた後は、グループによるワークショップ形式で行う。
 まずモデル事例を基に認知症患者の言動を脳の障害、性格、生活歴、環境など六つの要素で分析。そこで分かった患者の思いや望み、言動の理由を踏まえ、望ましい介護を考える。実践編として、参加者の事例について同様の分析を行い、自宅で実際にどのような介護ができるか、介護の悩みを解決するにはどうするかをグループで話し合う。
 次の回では、患者と介護者双方の心のケアを検討。両者の話がかみ合わないなど、コミュニケーション上の問題を考える。介護者の「あるある」な悩みを出し合い、それによって介護者がどんなストレス反応を起こすかを理解する。
 最後は、患者と家族を地域で支える環境づくりがテーマ。ここでは「私の介護地図」を作成する。介護者の「私」と「患者」を模造紙の中央に書き、その周りに家族などの「人」、介護施設などの「機関」を記入。それぞれの関係を表す線を太さや色などを変えながら、つないでいく。

受講者が作成した「私の介護地図」

 人間関係の本音を言語化することで心の内にある思いを吐き出すとともに、自分の介護がどのような人間関係、社会的な構造の中にあるかを知り、どのような支援を求めていけばいいかを理解していく。
 プログラムの効果は、五十四人の介護者を教室に参加する人、しない人に分けて検証。抑うつの度合いを示す心理的スコアを調べたところ、参加した人の群は教室終了後、受講前より7ポイント改善したのに対し、参加しなかった人の群では6ポイント悪化した。このほか、介護の満足感、患者への親近感、自己成長感、介護への自発的な取り組みなどでも、参加した人の方が良い結果が得られた。こうした改善効果は半年後に失われる項目が多く、半年ごとに再度受講することが望ましいことも分かったという。
 同センターはプログラムの普及を目指し、コロナ禍で集会が難しいことも踏まえて、テキストや動画をホームページ(「もの忘れ教室」で検索)で公開。家族向けのほか、医療・福祉施設で同様のプログラムを実施する参考として専門職向けのコンテンツも用意した。
 厚生労働省によると、日本では二〇二〇年現在、六十五歳以上の六人に一人程度が認知症患者と推計されている。同センター長の桜井孝さんは「世界で最も割合が高く、予防などの研究も日本が最先端を行っている」と説明。一方で「患者や介護家族の支援は遅れており、科学的に確立した方法がなかった」と指摘し「今回初めてエビデンス(根拠)が得られた意味は大きい。これを最初の一歩として、保険診療に認められるような方法を確立したい」と話す。

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