安保法反対が源流の「野党共闘」…共通政策締結で真価問われる衆院選 後押しする山口二郎教授に聞く

2021年9月9日 06時00分
衆院選を控え、野党共闘について話す法政大の山口二郎教授

衆院選を控え、野党共闘について話す法政大の山口二郎教授

 立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の野党4党は衆院選に向けた共通政策を締結し、自公政権との対立軸を鮮明にした。選挙でスクラムを組む「野党共闘」はどのように生まれたのか。この動きを後押しする「市民連合」運営委員の山口二郎法政大教授に聞いた。(聞き手・木谷孝洋)
 ―野党共闘の源流は。
 「2015年の安全保障関連法を巡る反対運動から生まれた。国会前で多くの市民が抗議の声を上げたが、野党の議員が少なすぎると痛感した。選挙で野党がそれぞれ候補者を立てていたら、与党に漁夫の利を与えることになる。デモで『野党はまとまれ』との声も上がり、野党を結束させる必要性が共有された」
 ―具体的にはどんな動きがあったのか。
 「15年12月に安保法に反対していた学者や若者が中心となり『市民連合』が立ち上がった。翌年の参院選1人区で野党の候補者を一本化し、自民党などの改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2の議席を確保することを阻止することが目標だった。32ある1人区で野党が候補者を一本化した結果、11選挙区で勝利できた。市民の間にも野党がまとまれば勝てるという自信が生まれ、その後の国政選挙や地方選挙での協力につながっている」
 ―国会内での連携も強まっている。
 「野党が協力して安保法廃止法案などの議員立法を提出したり、政府の問題点を追及する合同ヒアリングを開いたりすることが当たり前になった。安倍晋三前首相のもとで戦後デモクラシーが壊されるという危機感が共有されたことが大きい」
 ―17年衆院選では小池百合子東京都知事が「希望の党」を立ち上げ、野党共闘は苦境に立たされた。
 「1990年代以降の野党再編には、自民党に別の保守政党が対抗すべきだとする『保守2党論』と、リベラル野党論の2つの流れがあった。希望の党を巡る一連の動きは、リベラル色を強めていた民進党(当時)に対する保守2党論のクーデターだと思っている」
 ―小池氏から排除された側の枝野幸男氏が立民を結党した。
 「あの時、野党のリベラル勢力は土俵際まで追い詰められた。枝野氏が立民を立ち上げ、共産も選挙で協力することで野党第1党になることができた。あの騒動で保守2党ではなく、市民がリベラルな対立軸を持った野党を求めていることが明確になった」
 ―菅義偉首相が退陣表明した。
 「菅首相は官房長官時代から一貫して人の話を聞かず、説明しない政治家だった。コロナ対策でも知恵を集めて問題を解決するというリーダーシップが欠如していた。能力の限界が明らかになった末の退陣表明で、意外感はない」
 ―衆院選の野党共闘に与える影響は。
 「野党は菅首相を相手に戦いたかったのが本音だろうが、右往左往しても仕方ない。枝野氏を大将に野党が結束して政権の選択肢を示し、正攻法の戦いをするしかない。野党共闘の真価が問われる選挙になる」

 やまぐち・じろう 1958年生まれ。東京大法学部卒。北海道大教授を経て、2014年から法政大教授。専門は政治学。主な著書に「政権交代とは何だったのか」など。


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