<炎上考>ジェンダー平等に取り組む世界的企業が打った「悪手」 吉良智子

2021年9月9日 06時00分

日本初のヌードポスターとも言われる赤玉ポートワインのポスター

 夏の暑さを癒やすのは冷たい飲み物。どのようなシチュエーションでも飲み物そのものの味は変わらないはずだが、誰とどこで飲むかによって変わるという考え方はあるようだ。
 今年7月、日本コカ・コーラが「コークサマーチャレンジ」という企画を実施。男性ユーチューバーが「コーラをおいしく飲めるシチュエーション」をいくつか試し、その中で1番を決めるという動画をツイッターに投稿した。そのひとつが「#水着美女とコカコーラ」。この男性と、水着姿の若い女性たちがプールサイドで乾杯する様子が映し出されていた。
 コカ・コーラは男女問わず幅広い世代に受け入れられている清涼飲料だ。その宣伝に、顧客である女性を性的に扱う動画を公開するのは悪手だろう。動画には「セクシズム」「時代錯誤」などの批判が上がった。
 飲料と女性の身体を結びつける広告戦略の歴史は戦前にさかのぼる。そのはじまりが、半裸の若い女性がワイングラスを持つ「赤玉ポートワイン」のポスター(1922年)。現サントリーが制作した「日本初のヌードポスター」である。この刺激的なポスターは、当時大変な話題となった。
 また、アサヒビールやキリンビールなども美女とビールを1枚に収めたポスターを画家たちに描かせた。特に、キリンビールのポスターを長く手掛けた画家多田北烏は有名である。ワインやビールは外来の飲料であり、世間に広めるために思い切った方法を取る必要があったのだろう。
 戦後、居酒屋にはられた飲料類のポスターは「浜辺で水着の美女がビールジョッキ片手にこちらに笑顔を向ける」という図式が定番に。だが現在そうしたポスターは大手飲料メーカーでは下火となっている。商品の多様化が要因らしい。確かにさまざまな飲料を宣伝するのにあるひとつの固定化されたイメージのみで宣伝するのは難しいだろう。
 コカ・コーラを生産する飲料メーカーは、ジェンダー平等を掲げたオリンピック・パラリンピックのスポンサーをしていた。ジェンダー平等を含むSDGsの達成にも企業として取り組んでいるようである。であれば、広告宣伝戦略にもそうした理念を示してほしかった。

(きら・ともこ=美術史・ジェンダー史研究者)

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