ラジカセ 鳴りやまぬ魅力 70〜80年代の中古品、20代も収集

2021年9月9日 07時37分

日本製ラジカセの中古販売、修理を続けている松崎順一さん=いずれも東京都渋谷区の東急ハンズ渋谷店で

 音楽をスマートフォンやパソコンで聴く時代、角張ったデザインに持ち運び用の取っ手がある「ラジカセ」が根強い人気を保っている。1970〜80年代に生産された整備済みの中古品は、若い世代も注目する。ラジカセをこよなく愛し、修理・販売も手掛ける「家電蒐集(しゅうしゅう)家」の松崎順一さん(61)に魅力を聞いた。 (長久保宏美)
 東京・渋谷の東急ハンズ渋谷店。1階の一角にラジカセがずらりと並ぶ。松崎さんが店長を務めるラジカセ専門店だ。都内のデザインの専門学校を卒業後、20代からラジカセを収集。趣味が高じて2003年に足立区で、ラジカセを中心とした中古家電の販売・レンタル店を開いた。
 松崎さんのラジカセの定義は(1)ラジオとカセットテープレコーダーが付いている(2)持ち運び用の取っ手がある(3)乾電池で使える−の三つ。
 「1968年にオーディオ機器メーカーのAIWA(当時)がラジオ付きカセットレコーダーを約2万5000円で発売した。それが屋外で使えるポータブルオーディオのはしりだった。70〜80年代に国内で生産されたラジカセは性能、デザインとも秀逸でかっこいい」と松崎さん。
 「70年代初頭はメカニック好きの男性向けのデザインが主流で、80年代ごろからスリムでカラフルな機種も登場する。機能はシンプルなので、各メーカーはデザインで差別化を図ったのだと思う」

SANYO T-4100 1970年代後期。白黒テレビ付き

 東急ハンズの店舗では15〜20台のラジカセを展示・販売している。価格は整備済みで3万〜6万円で、どれも一点もの。当時のカタログも常備し、在庫販売もしている。
 「買うのはラジカセを学生時代に使っていた50代の方が多い。懐かしいと感じるのでしょうか。その一方で、渋谷という場所柄、20代でも購入する方は増えている」と言う。
 松崎さんの店の常連で、10年以上前から収集を続けている東京都墨田区の会社員、小笠原大(だい)さん(29)がラジカセの魅力を語る。
 「80年代後半までの日本のものづくりの良さを実感できる品質。それにソニーやマクセル、TDKなどテープメーカーによって音質に個性があるのが素晴らしい」
 続けて「僕は新製品が続々と出た“リアルな時代”を体験しているわけではないんです。単に懐かしいのではなく、今使ってもモノがいい」と、品質の良さを強調する。

SANYO U4(ユーフォー)シリーズ 1980年代にヒット商品となった

 中古品を修理して販売するには部品も含めて仕入れが重要になる。すでに生産されていない製品をどのように手に入れるのか。
 松崎さんは「基本的には廃棄物処理業者さんに依頼し、ごみに出されたラジカセを引き取る。遺品整理業者に交渉して保管場所に行って買い取ったり、お客さんが持ち込んできたりすることもある」と話す。
 こうして仕入れた部品で、壊れたラジカセを再生する。部品がなければ、知り合いの町工場に頼んで作ってもらうこともある。
 カセットテープはデジタル化の流れで国内生産が縮小しており、今は海外で生産された実用的なテープが売られているくらいだ。
 ただ最近になって、柔らかなアナログ録音の音質が再認識され、記録メディア専門商社「磁気研究所」(東京都)が「高性能カセットテープ」の生産・販売に乗り出すなど、新たな動きも出ている。
 松崎さんの店でも、録音を消去した中古のテープを55円〜550円で販売している。「日本メーカーのテープは品質が良いので、今でも十分使えます」。3Dプリンターを使ってオリジナルの生テープを製作し、今秋にも販売する予定だ。
 ◇
「デザインアンダーグランド渋谷ベース」
〒150 0042 渋谷区宇田川町12の18 東急ハンズ渋谷店1Bフロア 電03(5489)5111(代)
「1階のラジカセ屋さん」で呼び出し。松崎さんは原則、毎週木・金・土の各日午前11時〜午後8時、店舗で勤務。
<お断り> 掲載のラジカセは取材時に店頭にあったものです。

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