宣言の期限、制限緩和は「政権の思惑優先」 菅首相、強い言葉連発も説明しない姿勢で行き詰まり

2021年9月10日 06時00分
 菅義偉首相は9日の記者会見で、東京都などへの新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長を表明した。コロナを巡る首相の会見は今年に入って15回目。「必ずウイルスに勝つ」などと強い言葉を発しながら、感染再拡大を招く事態を繰り返した。今回の流行は減少傾向に転じたが、国民の信頼を失った首相は退場する。8年8カ月続いた安倍・菅政権。十分な説明をせずに突き進んできた政治はコロナ対応で行き詰まった。(井上峻輔)

◆わずか28日間…

 首相は9日の会見で「首相として最後の日まで、全身全霊を傾けて職務に取り組んでいく」と強調した。
 積み重ねてきたコロナ対応の会見で、首相は明確な根拠を示さず「1カ月後には必ず事態を改善」(1月7日)、「今回の宣言が最後になるような覚悟で」(7月30日)などと発言。数週間後には「申し訳ない」と謝罪の言葉に変わり、世論の失望を招いた。
 今、政権中枢には「ようやくワクチン接種の効果が出てきた」と安堵感が漂う。だが東京都の場合、今年になって宣言もまん延防止等重点措置も発令されていなかったのは、1月初めと春先のわずか計28日間。長期化を招き、宣言の効力を薄めた責任は大きい。

◆立つ鳥跡を濁さず

 今回の延長期限は今月30日までで、自民党総裁としての首相の任期と重なる。期間の根拠に関し「新規感染者数の減少傾向と医療提供体制の強化を踏まえた」というのが政府の公式見解だが、政権幹部の1人は「次期政権になる前に、解除の判断をするのが1つの礼儀。立つ鳥跡を濁さずだ」と科学的ではない理由を明かす。
 「政権の都合」を優先した期間設定は、これまでもあった。東京五輪が典型例だ。感染拡大の懸念が消えない中、3月に東京などの宣言を解除したのは、五輪の聖火リレーが始まる直前。4月の再発令と6月の重点措置への移行は、解除した状況で7月の五輪を迎えたいという狙いが透けた。
 結局、感染拡大を抑え込めず、五輪・パラリンピックは宣言の発令中に開催された。大会の感染拡大リスクの認識、開催可否の判断基準について、首相は最後まで説明しなかった。

◆衆院選へアピール

 首相らの姿勢に関し、政府対策分科会の尾身茂会長は「専門家の分析よりやや楽観的」と指摘してきた。
 認識のずれは、9日に政府が基本的対処方針分科会に示した行動制限緩和の基本方針でも表面化した。宣言地域でもワクチンの接種証明や検査の陰性証明を活用し、飲食店での酒類提供を認める内容で、尾身氏は宣言中の実施に反対した。
 政府が緩和に傾くのは、社会経済活動の早期再開を望む経済界や自民党からの強い要望があるからだ。11月までに行われる衆院選を視野に、社会が日常を取り戻しつつあるとアピールしたい思惑もにじむ。
 基本方針には「重症患者の発生を抑えつつ病床を増やせば、多くの国民の命や健康を損なう事態は回避できる」と明記したが、首相は9日の会見で具体策を語らなかった。
 同席した尾身氏は政府のコロナ対策について「問題解決のための責任の所在が少し曖昧だった。非常時に専門家集団が集まり、首相に助言する仕組みが必要だ」と注文した。

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