地球の歩き方 巨像、城、奇岩…「図鑑化」で旅心くすぐる 新しい歩き方

2021年9月10日 06時31分

コロナ禍で海外旅行ができない中、刊行が続いている地球の歩き方「旅の図鑑シリーズ」

 バックパッカーの強い味方「地球の歩き方」が、新しい歩き方を始めている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で海外旅行が制限される中、「巨像」や「城」などテーマ別に、創刊約四十年の蓄積を詰め込んだ「旅の図鑑」シリーズは、従来の「旅行手引書」とはひと味違う。生き残りをかけた歩き方とは。
 「世界の魅力的な奇岩と巨石139選」「世界なんでもランキング」「世界246の首都と主要都市」−。通常版の国ごとのガイド本ではなく、各国の知識が学べる「旅の図鑑」シリーズ。地球の歩き方編集部(品川区)の福井由香里さん(43)は「通常版に載せきれなかった旅に深みが増す雑学を掲載し、一冊では出版できなかったマイナーな国もたくさん登場しています」と紹介する。

旅の図鑑シリーズ第8巻「世界のすごい巨像」より、ガネーシャ像

 たとえば「世界のすごい巨像」には、ピンク色のガネーシャ像(タイ)や、チベット仏教の聖人をかたどったパドマサンバヴァ像(インド)など、鮮やかな写真とともに、見どころや見学方法、「巨像へのお願いの仕方」などが書かれ、旅心をくすぐる。牛久大仏(茨城県)やガンダム像(横浜市)など国内の巨像約二十体も収録されている。

旅の図鑑シリーズ第3巻「世界の魅力的な奇岩と巨石139選」より、ボリビアのヴァレ・デ・ラ・ルナ(左ページ)とペルーのヴィニクンカ・レインボーマウンテン

 「世界のすごい城と宮殿333」には、童話のような美しい城や空中宮殿の遺跡、宿泊可能な古城など。東京からは皇居もエントリー。世界を隅々まで旅した気分になれる。

「世界のすごい城と宮殿」には皇居も収録

 「旅の図鑑」発刊には、新型コロナの影響がある。昨年一月、中国・武漢の封鎖で、中国関連タイトルの改訂作業が中断した。過去にも重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大や、紛争などによる治安の悪化で作業が止まることは、「よくある話」だったが、四月に緊急事態宣言が出され、東京五輪・パラリンピックが一年延期。自由に海外旅行に行けなくなり、売り上げは九割減まで落ち込んだ。編集部を抱えていたダイヤモンド・ビッグ社は今年一月、編集部を含む出版事業などを学研グループに事業譲渡した。

「地球の歩き方」の宮田崇編集長

 「地球の歩き方ブランドを失うことは避けたかった」と話す福井さん。渡航できない中、編集部が四十年間で培った旅の知識を生かせないか…。そこで、もともと東京五輪・パラリンピックの開会式を楽しんでもらおうと昨年七月に発刊した「世界244の国と地域」に着目。これを第一巻として「旅の図鑑」のシリーズ化を決めた。

「世界のすごい巨像」には茨城の牛久大仏も=いずれも本社ヘリ「おおづる」から

 島、巨像、パワースポット、グルメ。旅先でやりたいこと、行きたい場所を、編集部十三人で思い描きながら案を出した。海外に行けないが、従来通り取材は徹底。世界各地の現地スタッフとやりとりしながら内容を精査した。そうして今年三月から刊行が本格化し、わずか半年で十巻まで増えた。累計十二万一千部のヒットというから、いかに読者が旅に飢えていたのかがわかる。福井さんは「長年のノウハウがあったからこそできた」と振り返る。

東京も深掘り中!

 今後は図鑑シリーズを進めつつ、五輪用に発刊した初の国内版「地球の歩き方 東京」の魂を受け継いだ東京深掘りシリーズにも注力する方針だ。
 宮田崇編集長(43)は「人は旅することをやめられない生き物。アフターコロナに、笑顔で旅行を再開できる日が来ることを見据え、旅の図鑑シリーズをはじめとする弊社の媒体を通して、妄想旅行や次の旅先選び、旅の学びを楽しめるような夢にあふれた情報をいろいろな形で発信していきたいです」と思いを込めた。 
<地球の歩き方> 1979年創刊の海外旅行ガイドブック。約170の国や地域ごとに観光名所や、旅先で必要な現地事情や知識を網羅する。女子旅向け「アルコ」などを含め8種約290冊を出版している。
 文・山下葉月/写真・嶋邦夫
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