巨額の政策活動費どう使った?元幹事長が語る自民党、旧民主党の実態
2021年9月11日 06時00分
◆党職員が現金持参 ロッカーに保管
飲食や餞別、事実上の選挙費に使われていた政策活動費。政治資金収支報告書によると、自民党幹事長の場合、年間30回近く分けて、数千万円ずつ支出されていた。「こちら特報部」は、そのことを示す領収書を総務省への情報公開請求で入手した。
「金 五千萬圓也 政策活動費 右領収いたしました」。領収書には、一枚一枚直筆で議員の名前が記されている。だが、日によって微妙に筆跡が違うように見えなくもない。まさか本人以外もサインするのか。あらためて元幹事長に尋ねると、「忘れているだけかもしれないが、正直書いた覚えはない」。
領収書は空手形なのか。そもそも、どうやってカネを授受していたのか。「(党職員が)僭越ですが、これぐらいお持ちいただけませんでしょうかと持ってくる」「振り込みではなかった。現金。ロッカーに(入れ)、入り用が来たら使った」
振り込みではないのは、通帳に記録が残ることを避けるためか。記者の問いに元幹事長は答えた。
「まあ、そうだ」
元幹事長の証言をふまえもう一度、党本部幹事長室に尋ねたが、「法律上求められている収支報告書の記載事項以上の内容につきましては、政治資金規正法が配慮する政治活動の自由に鑑み、従来より回答は差し控えさせていただいております」と答えるのみだ。
◆「どうしても外に出せないものはあった」と岡田氏
自由に使える政治資金が必要なのは、野党もだ。
「非常に不透明といわれても仕方がない。巨額なお金が野放しにされているのですから」。2009~11年にかけ旧民主党で2度幹事長を務めた岡田克也衆院議員(現立憲民主党常任顧問)は、当時の政策活動費について振り返った。
岡田氏は20年前の01年、自身の政治団体を1つに統合し、制度上は3年分しか公開されない収支報告書をホームページで公開し続けるなどしてきた。当時としては画期的。「自分のことだけでなく、党としても政治資金改革を進めてきた」と自負する。
だが、政策活動費は消えなかった。「最小限にとどめようとしたが、最小限として残った」「どうしても外に出せないものはあった」
外に出せないものとは?
岡田氏は「例えば」と前置きした上で、「選挙で党公認ではない候補者に資金援助する際の資金は、表に出しにくい。将来的に仲間にしたい時に(支出する)。そういうお金は表には出しにくい」
岡田氏は「使途を明確にする本来の政治資金規正法の考え方からすると、避けるべき手法だ」とし、「資金管理団体や政党支部に支出し、使途は記載するのが筋。極力ゼロに近づけるように何かしらのルール作りは必要だ」と続ける。
◆「政治家自ら制度変更を」
政治資金に詳しい元日本大教授の岩井奉信氏によると、自民党の場合、党から議員個人に支給されていた盆暮れの「氷代」と「もち代」は、安倍晋三前首相が幹事長だった2004年に銀行振り込みとなり、「見える化」した。「次は政策活動費の番。政策活動費の使途を収支報告書に載せるよう、政治家自らが制度を変えるしか道はない。ボールは政治家にある」
ただ、政策活動費の「抜け穴」を閉じても、「表に出せないカネ」を必要とする政治が続くなら、そのカネの流れはさらに潜行していくだけかもしれない。
「政策活動費は『政党の銀行化』を進めた。党がお金を集め、党の実力者が引き出し権を持つ」とし、訴える。「税金が原資の政党交付金と政治資金の報告書は形式的に分けられ、政策活動費に税金は入っていないロジックだが、筋論にすぎない。政治家のカネは公的なお金で、歳費以外好きに使っていいはずがない」
◆デスクメモ 一般国民置き去りの「幸せ」
「あったらあったで、みんな幸せだ」と元幹事長はのたまう。もらえる立場、配る立場なら、そりゃそうだろう。誰だってお金はあって困ることはない。だが、その「みんな」の中に一般の国民は入っていない。政治家の間だけで勝手に「幸せ」になっているようなカネなど、論外だ。(歩)
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