常総水害、語り継ぐ 発生6年 市民が記録誌

2021年9月11日 07時37分

完成した記録誌を手にする染谷修司さん=常総市で

 二〇一五年の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊し、流域の常総市に大きな被害をもたらした「常総水害」の発生から十日で六年。記憶の風化が懸念される中、常総水害・被害者の会のメンバーらが、記録誌「常総市大水害の体験を語り継ぐ 被害者主人公の活動〜6年の軌跡〜」を発行した。被害者の会共同代表世話人の染谷修司さん(77)は「記憶は薄れる。だから記録する必要がある」と力を込める。(林容史)
 記録誌はA4判八十六ページ。市民から聞き取りした被害の実態や生活再建への取り組み、市民らが国に損害賠償を求めている常総水害訴訟の経緯などがつづられている。染谷さんら市民有志十二人がまとめた。発生から五年をめどに発行する予定だったが、作業の遅れで一年ずれ込んだ。
 被災者の証言は生々しい。
 花き生産販売の高橋敏明さん(67)は、ポトスなど観葉植物十万鉢や農機具などを失ったが、ボランティアの支援と家族の頑張りで再建に踏み出した。常総水害訴訟の原告団にも名を連ねる高橋さんは「被害額は五千万円を超え、再び営業を始めるために多額の借金をしなければならなかった。しかし、いまだ会社は赤字経営が続いている」と窮状を訴える。
 赤羽武義さん(81)はヘリで救助された後、妻と避難所暮らしを強いられた。五カ月後、妻は亡くなった。市は赤羽さんの妻を災害関連死と認定したものの、赤羽さんは「持病はあったが、妻は水害の前まで元気だった。なぜ死んだのか、それだけを国に問いたい」と強調する。
 記録誌に寄稿したNPO法人「茨城NPOセンター・コモンズ」の横田能洋代表理事(54)は「被災した人は一人だけで選択を迫られ、どうしたらいいかのか分からない。(記録誌には)そうした被災者の背中を押す体験が詰まっている」と評価する。
 染谷さんは「二〇一九年の台風19号による那珂川、久慈川の氾濫など、県内では大きな被害が続いている。常総市民が体験したことを被災者の支援に生かしてほしい」と呼び掛ける。
 記録誌は千部製作。希望者には一冊五百円で販売する。問い合わせは染谷さん=電090(8497)7029=へ。
<関東・東北水害> 2015年9月9日に上陸した台風18号や前線の影響で、関東・東北地方を中心に被害が出た豪雨災害。宮城、茨城、栃木3県で計8人が死亡し、常総市では13人が災害関連死と認定された。9月10日には鬼怒川の堤防が決壊し、常総市では約3分の1に当たる約40平方キロが浸水。住宅5163棟が全半壊した。逃げ遅れて屋根などから救助された住民は約1300人に及び、市内39カ所に最大6200人以上が避難した。

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