自治体で閲覧中止相次ぐ 土地・建物 所有者情報 個人情報保護、意識高まり

2020年3月30日 02時00分

今月末で閲覧できなくなる加須市の「土地台帳」(左)と「家屋台帳」=市役所で

 自治体が、各区域内の土地や建物の所有者情報を掲載している台帳。法務局からの情報を基に作成しており、市町村によっては、第三者も閲覧できる。しかし、近年の個人情報保護の意識の高まりから、このサービスを廃止する自治体が増えている。県内では、さいたま市や北本市などが昨年廃止し、加須市や川口市も今年三月末で取りやめる。背景を取材した。 (寺本康弘)
 台帳の名称は自治体によってさまざまで、加須市は「土地台帳」「家屋台帳」としている。辞書のような厚さがあり、一ページごとに、市内の土地や建物の所在地や広さ、所有者とその住所などが記されている。抵当権などの記載はないものの、所有者などは登記事項と同じ情報だ。
 同市の担当者は、第三者閲覧について「長年、続いている市民サービス」と話す。廃止の要因の一つとして挙げたのが、市民からの苦情や問い合わせ。窓口などに「自分たちの知らないところで、資産情報を見られるのはおかしい」「勝手に閲覧できるのは、いかがなものか」といった意見が寄せられていたという。
 しかし、提供しているのは、各地の法務局でも手続きを踏めば、誰でも知ることができる内容。市町村がサービスをやめたからといって、第三者の閲覧を防げるわけではない。
 ただ、費用に目を向けると、情報を知りたい人にとっては、市町村の台帳の方が割安で利用しやすいという側面が分かった。法務局で登記事項証明書を請求した場合、一件につき六百円かかるが、加須市の場合は、台帳一冊の閲覧でわずか百五十円。しかも、一冊に四百件ほどの情報が掲載されている。手数料は自治体によって異なるが、さいたま市、川口市、北本市でも、いずれも法務局より安く複数の情報が得られるサービスだった。
 このため、宅地開発やアパート建設、ソーラーパネル設置などに関わる業者が、営業先を開拓するための情報収集の手段としていた可能性があると考えられる。加須市で二〇一八年度に台帳を閲覧したのは、業者が四百八十五冊で、個人は五十四冊だった。市によると、朝から夕まで、台帳の情報を書き写す業者もいたという。
 一方、個人の閲覧者も少数ながら一定数いる。農地など自分の持っている土地の周囲の所有者を探す、相続した土地の場所を知りたい、などの目的だという。
 市によると、サービス廃止後は、土地の情報を知るためには、インターネットで登記情報を見られる「登記情報提供サービス」を利用するか、法務局で登記を調べてもらうことになる。法務局は市町村ほど細かく配置されていないため、市の担当者は「利用する市民にとってみると、遠くまで足を運ばなければならなくなり、心苦しい部分がある」と話している。
 住民サービスと個人情報保護の間で、自治体も難しい判断を迫られているようだ。

関連キーワード


おすすめ情報