邦人救出のため危険なアフガンに自衛隊派遣を 自民内に法改正求める声 総裁選でも争点に?

2021年9月14日 06時00分
 イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンからの邦人らの退避を巡り、自衛隊に今より危険な任務を付与する自衛隊法改正を求める声が自民党内で広がっている。現地の安全が保たれていない限り、派遣できないという規定などを見直すべきだとの主張だ。自民党総裁選の争点にもなりそうだが、憲法に抵触する恐れもあり、慎重な議論が必要だ。(山口哲人)

◆「危険だからこそ…」

 「邦人らが危険な状況にあるから救出に行くのに、現地の安全が確認されない(といけない)ということに矛盾を感じている人は多いのではないか」
 自民党の岸田文雄前政調会長は13日、記者会見で外交・安全保障分野の総裁選公約を発表し、自衛隊法改正に意欲を示した。
 同じく総裁選への立候補を表明している高市早苗前総務相もこの日、記者団に「(アフガンで)自衛隊は空港の中でしか活動できない、街中まで助けに行けない現実に直面した」と法の不備を強調した。
 複数の首相候補が歩調を合わせるのは、アフガンから「救出」した自国民らが欧米などに比べて少なく、党内の不満が高まっているからだ。国会議員と党員・党友が投票する総裁選で、自衛隊の海外活動の拡大に前向きな保守層を取り込みたい思惑も透ける。

◆自衛隊法では「安全」条件

 政府が今回のアフガン派遣で適用した自衛隊法は、騒乱などが起きた国から邦人らを移動させる規定。「安全に実施できる」ことを条件に定める。隊員に認められる武器使用は「正当防衛」の範囲に限られる。
 自衛隊法には、戦争などの緊急事態を想定した「在外邦人等の保護措置」の規定もある。相手国の同意や当局などによる「公共の安全と秩序の維持」などの派遣要件を明記。国などの統治下なら戦闘行為の相手はテロ組織などにすぎず、武器を使用しても憲法9条が禁じる「武力行使」に当たらないと解釈している。
 自民党内では、こうした規定の見直し論が浮上。防衛政策に詳しい議員は「現行法では現地が無政府状態になったり、治安が維持されていなかったりしたケースに対応できない」と指摘する。

◆タガが外れれば改憲も…

 もっとも、要件を緩めるのは容易ではない。自衛隊の任務が憲法9条に触れる懸念がある上、隊員の危険も格段に高まるからだ。
 安全な実施を前提にせず、治安の悪い地域で任務に就いてトラブルに巻き込まれた場合、隊員自身だけでなく、助けようとしている邦人らを守ることすら難しくなる「本末転倒な結果」(防衛省関係者)を引き起こす可能性がある。
 相手国の同意などの要件を取り払えば、政府の解釈は崩れ、隊員の武器使用が海外での「武力行使」に当たる恐れが生じる。
 自衛隊法を含む安全保障関連法は、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を盛り込み、多くの憲法学者らが違憲だと指摘してきた。邦人保護の要件も議論の末に新設され、憲法の枠内という制度設計にするため「ガチガチにたがをはめている」と防衛省幹部。「それを外して活動を広げるなら、改憲するしかない」

PR情報

政治の新着

記事一覧