9・11テロ「政府は知っていた」…アメリカで広まる陰謀論 記憶の風化に危機感高まる

2021年9月13日 21時36分

11日、米ニューヨークの世界貿易センタービル跡地の近くで、テロに関する陰謀論が書かれた看板を見る人=杉藤貴浩撮影

 【ニューヨーク=杉藤貴浩】米中枢同時テロから20年が過ぎ、次世代への悲劇の伝承が課題となっている。事件を直接知らない9・11後世代が増え「政府は攻撃されるのを知っていた」などとする陰謀論も広がる。新型コロナウイルス禍でも見られる誤情報の流布に、関係者は危機感を深めている。

◆事件後世代は4割が…

 調査会社ユーガブなどが今月実施した世論調査によると、テロ発生当時のブッシュ(子)政権が攻撃の情報を得ながら放置し、「同時テロが起きるのを意図的に助けた」とする話を本当だと考える人の割合は「絶対に」と「多分」を合わせて34%に上った。テロ後に本格的に普及したインターネット動画を中心に広まった根拠のない情報だが、事件当時に生まれていない人を含む18~29歳では41%、30~44歳でも37%に達した。

◆コロナも「でっち上げ」

 実際、WTC跡地「グラウンド・ゼロ」周辺では、追悼の人々に交じって「テロは防ぐことができた。政府はウソをついている」などと訴え、ビラをまく人々の姿も。その1人、ニューヨーク市のタクシー運転手(42)は取材に「政府がわれわれの自由を奪うためテロもコロナもでっち上げたんだ」と話した。
 一方、追悼に訪れた元エコノミストのユージン・スプラックさん(69)は、20年前にビルの倒壊を目撃し、職場の仲間を失った体験から「実際に何が起きたかを見た私にとっては愚かとしか言えない」と陰謀論を一蹴。「この20年で進んだ米国の分断や閉塞(へいそく)感が、こうした誤情報の広がりにつながっているのだろう」と顔をしかめた。

◆事実を伝え続けるために

 米国では国民の4人に1人に近い7500万人がテロ後に生まれており、事件に関する教育の重要性が年々高まっている。「9・11記念博物館」のクリフォード・チャニン副館長は8日のオンライン記者会見で「陰謀論に対抗する事実を率直に伝えていくしかない」と強調。学校などと連携し、100万人の学生に体験者の証言動画などを視聴してもらう計画を発表した。
 同時テロを巡っては、サウジアラビア政府の関与を疑う声もあるが、11日に公開された捜査資料からは結論を得られなかった。

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