菅首相退陣に泣いた小泉進次郎氏はナルシスト? 政治家の涙にはどんな意味があるのか

2021年9月14日 06時00分
 菅義偉首相の退陣表明で、目頭を熱くした小泉進次郎環境相。今回の自民党総裁選では出番がなさそうだが、「政治家の涙」は注目を集めた。これまでも多くのセンセイ方が流してきたが、どんな意味があるのか。(木原育子)

◆時折声を震わせながら…

 「いっぱい思い出すとね…(菅首相の)言葉浮かんできますけど…」

菅首相との面会後、取材に応じる小泉環境相(中)=東京・永田町で

 3日、首相官邸。菅首相が総裁選に出ないことが明らかになり、不出馬を進言していたという小泉環境相が記者団の取材に応じた。時折声を震わせ、目を赤く染めながら情感たっぷりに語った。
 「ひと言で言うと、メンタル弱いなって思います」と政治ジャーナリストの安積明子さん。「政治家ってナルシシストが多い。頑張った自分、大きな壁に立ち向かう自分などと、自分で自分に酔って泣いちゃう。国民はしらけます」

◆「純一郎氏とスケール全然違う」

 涙と言えば、小泉氏の父親の純一郎元首相も。就任前、鹿児島の知覧特攻平和会館に立ち寄り、特攻隊員の遺書を前に大粒の涙をぽろぽろ流した。その後の自民党総裁選で、靖国神社を参拝する公約を掲げるのに結び付いたとされる。
 安積さんは「純一郎氏の涙は作戦もあるんでしょうが、ドラマに仕立てる涙だった。でも、今回の進次郎氏の涙は特段泣かなくてもいい場面。スケールも意味合いも全然違う」と語る。

◆「無念の思い」「私は未熟」と泣いたのは

 政界で多いのは、不祥事にからむ「不覚の涙」だ。元民主党代表の小沢一郎衆院議員は2009年、西松建設の献金を巡って公設秘書らが起訴された際の記者会見で「無念の思い」と涙を浮かべた。記者に涙の意味を問われると、「つらかったからではありません。仲間、国民から多くの励ましをいただいた。そのことを申し上げる時に胸が詰まった」と語った。
 辻元清美・立憲民主党副代表は02年、政策秘書給与の不正受給疑惑で参考人招致された国会で、「私は未熟だった」と声をふるわせた。国政ではないが、野々村竜太郎・元兵庫県議は14年に政務活動費の不自然な支出を指摘され、記者会見で号泣。泣きっぷりが国内外から注目を浴びた。
 海外で名前が挙がるのは、不倫疑惑を追及された米国のクリントン元大統領。1998年の演説で「神に純真な心を授けてほしい」と、涙ながらに国民に許しを請うた。

◆「加藤の乱」では…

 政局にからむものも少なくない。有名なのは、故加藤紘一・元自民党幹事長が森喜朗首相(当時)に退陣を迫った「加藤の乱」(2000年)で、谷垣禎一・元総裁が見せた涙。乱が不発に終わっても内閣不信任案に賛成しようとする加藤氏を、「あんたが大将なんだから行っちゃ駄目だ」と涙ながらに引き留めた。
 東日本大震災後の11年7月には、海江田万里衆院議員が国会で経済産業相辞任の時期を追及され、「もうしばらくこらえて」と泣きながら続投を懇願。故渡部恒三・民主党最高顧問に「自分のことで泣いちゃいかん」と叱責された。
 一方、自民党の尾辻秀久元厚生労働相は08年の国会で、がん対策基本法を成立させ、がんで亡くなった民主党の故山本孝史参院議員の追悼演説をした。「先生、今日は雪です。ずいぶんやせていたから、寒くはないですか」と語りかけ、おえつ混じりに「戦友の死」を悼んだ。

◆コロナ禍「べそかいている場合ではない」

 さまざまな場面で現れる「政治家の涙」だが、政治評論家の森田実さんは「感情を表に出す人に、国を任せられる良いリーダーはいない。政治家の涙は疑ってもらいたい」と一刀両断する。
 「政治家が自ら涙を流すのは笑止千万。国民がコロナなどで、これほどつらい時期を過ごしているのに、べそかいている場合ではございません」

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