最低賃金では最低限の生活さえ苦しい…必要水準の検証を

2021年9月14日 06時00分
 最低賃金(最賃)に近い給料で働く人の割合が増え、格差対策として最賃の重要度が増している。国際的にみても水準は低く、政府も与野党もほぼ一致して引き上げを主張する。最賃額が生活に直結する世帯も増え、必要な水準を検証し直すべきだとの意見も出ている。(山田晃史)
 「(新型コロナウイルス)感染症の影響で賃金格差が広がる中、是正には最低賃金の引き上げが不可欠」
 政府は6月に公表した経済財政運営の指針「骨太の方針」にこう明記した。引き上げ目安を決める今年の審議会では政府の意向を反映、「経営が圧迫され雇用を維持できない」と主張する経営側の反対を押し切り全国平均で930円に決まった。引き上げ幅28円は過去最大だ。野党の多くも引き上げに賛成した。
 これまで最賃に近い水準で働く人は、主婦や学生ら家計を補助するための労働とみられ、最賃は低く抑えても問題ないとみなされる傾向があった。1990年代の規制改革を機に、賃金の低い非正規雇用が増加、彼らが最賃に近い水準でありながら家計を支え、世帯が困窮する事態が生じた。
 低所得世帯の割合を示す相対的貧困率は2017年、先進7カ国(G7)で2番目に悪い。19年の国民生活基礎調査では、年収200万~300万円未満の世帯が13.6%と最多。かつて最賃の引き上げは雇用を減らしかねないなど「副作用」への懸念が強かったが、風向きは変わった。
 13年度からは毎年、前年度比2~3%増と高い水準で引き上げられている。それでも20年のG7比較では下から2番目だ。都留文科大の後藤道夫名誉教授は「政府は最賃で生活できると判断しているが、最賃に近い水準ではすぐに困窮する。必要最低限の生活ができる費用と賃金を検証し直すべきだ」と話す。
 ただ、最賃引き上げの継続で中小企業の経営は厳しさを増している。取引先への価格転嫁や生産性の向上によって賃上げの余力を確保できるかが焦点になっている。(山田晃史)

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