子どもに夢を ネリマックス 練馬発・パパたちが作ったヒーロー 敵は社会問題!

2021年9月14日 06時34分

練馬区の父親らが作ったヒーロー「ネリマックス」=埼玉県加須市で

 少子高齢化、地方の過疎化。子どもの未来に暗い影を落とす社会問題を憂い、練馬で生まれたヒーローがいる。イクメン戦士ネリマックス。育児中のパパたちが作ったヒーローだが、子の成長や家庭の事情で仲間は減り、誕生時から関わるのは一人になった。それでも悪の組織と闘い続けるのは「子どもの笑顔が見たい」からだ。
 赤いヘルメットは育児に燃えるハートの証し。額には「育」のマークが輝く。イメージカラーは練馬を走る西武鉄道のブランドカラーにもなっている「青」。ネリマックスには育児と練馬への思いが詰まっている。

コーレイカーン(高齢化)

 敵キャラは、高齢化の「コーレイカーン」、児童虐待の「ギャクタイン将軍」など社会問題がモチーフ。問題の根幹に社会の無関心があるとして、敵の組織を「ムカンシン帝国」と名付けた。

カローシーン(過労死)

 重いテーマに立ち向かうが、ショーはコミカルだ。敵キャラは憎めないとぼけた性格で、ネリマックスもショーの合間に観客に握手を求めるなど愛嬌(あいきょう)たっぷり。バトルあり、笑いありのショーは多くの子どもを魅了する。

カソカーン(過疎化)=敵キャラクターの写真はいずれも塩田さん提供

 ネリマックスは二〇一二年、練馬を拠点に現役パパでつくる育児支援団体「ねりパパ」から生まれた。創設メンバーで唯一、今もヒーロー活動を続けるネリマックスの「中の人」の塩田照明さん(52)は「人生をかけようと思っている」と意気込む。
 塩田さん自身、ヒーローに人生を変えてもらった。いじめにあっていた中学一年のある日、同じように仲間外れにされたクラスメートに話しかけられた。ヒーローの話で盛り上がり、二人で教室中に笑い声を響かせた。これを機に友人が増え、いじめはなくなった。目立ちたがり屋の性分も発揮し、授業中に手作りのヒーローの衣装を着て登場するなど人気者になった。
 卒業後、ヒーロー熱は冷めるが、結婚して長男が生まれるとその思いは再燃。同時期に勤め先が開いた地域のイベントで、ヒーローの衣装を着ると多くの子どもが寄ってきた。中学時代の情熱がよみがえった。
 完成度の高い衣装作りに励むとともに、児童養護施設でのショーを思いつく。都内の施設に片っ端から電話で交渉し、練馬区の二施設が快諾。ほかの出演者はSNSで募った。
 誰もが知る既存のヒーローのショーをした。子どもたちは目を輝かせ、ショーは成功。自信を深めた塩田さんは仲間に「オリジナルヒーローを作ろう」と打診した。ところが全員が反対。仲間が好きなのは演じた既存のヒーローで、子どもではなかったからだ。

ネリマックスへの思いを語る塩田照明さん

 「子ども好きな仲間じゃないと活動できない」と塩田さんは子ども向けのボランティア団体を探し、ねりパパに参加。ねりパパメンバーとアイデアを出し、ネリマックスは誕生した。
 当初は五人ほどで区内の児童館でショーを開催。だが各地のイベントに呼ばれるなど忙しくなると、参加人数は減少。二年後には塩田さんだけに。塩田さんはそれでもSNSで仲間を集め、地道に活動。コロナ前は練馬だけでなく、埼玉や千葉などの児童養護施設などからショーの依頼が舞い込んでいた。
 今、施設からはコロナ禍後のショーを熱望され、子どもたちからは「ネリマックス、だいすき」と手紙が届く。無報酬を貫き、体力的にも相当きついが、「ヒーローになりたいという自分の夢の続きを見たいわけじゃない」と笑顔で手作りの衣装に袖を通す塩田さん。「子どもに夢を与えたいんです」。ヒーローに憧れた少年は今、本物のヒーローになっている。
 文・西川正志/写真・平野皓士朗
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