中国で「芸能人粛清」 文化大革命の再来?格差解消の名目で強まる統制

2021年9月14日 20時47分
中国の人気俳優、鄭爽さん(共同)

中国の人気俳優、鄭爽さん(共同)

 【北京=中沢穣】中国の習近平政権が、芸能、ゲーム、IT企業、教育など幅広い分野にわたり、統制強化を加速させ、中国を大混乱させた文化大革命(1966~76年)の再来を危ぶむ声が出ている。背景には、経済格差など改革開放政策の弊害が危険な水準に迫っているとの認識があるとみられる。ただ、懸念の沈静化を図る動きもあり、11月の共産党の重要会議での発言が注目される。
 芸能界への統制強化は8月下旬から目立つ。トップ女優、趙薇(ヴィッキー・チャオ)さん(45)の出演作の一部が動画配信サイトから消えたり、人気女優の鄭爽ていそうさん(30)が巨額脱税で処分を受けた。
 党中央宣伝部は2日、高額な出演料やファンクラブの過熱化などが「社会風紀を著しく汚染している」と批判した。党中央規律検査委員会は8月末に「資本が利益を追求した結果」との見解を示した。
 統制はゲーム業界にも及ぶ。1日からは未成年がネットゲームで遊べるのは金土日と祝日の午後8~9時に制限された。8日には党中央宣伝部がゲーム各社に対し、未成年が制限をすり抜けないように利用者審査の厳格化を命じた。
 一連の動きは、知識人への批判に端を発した文革を想起させた。習氏は8月中旬、毛沢東が唱えた「共同富裕」を持ち出し、格差解消のために大企業などに寄付を求めた。統制強化の標的となっているIT大手は巨額寄付を強いられた。
 さらに無名のブロガー、李光満氏が「重要な変革が始まった」と統制強化をたたえる文章を発表すると、新華社などがネット上で次々と転載。文革の再来では、と懸念の声が上がった。
 ところが、党機関紙、人民日報系の環球時報の胡錫進こしゃくしん編集長は、李氏の文章を「国家の大方針に背く」と批判。人民日報も「非公有制経済(主に民間企業)を励まし、支持し、導く政策は揺らがない!」との評論を1面に掲載し、文革再来との見方を強く否定した。官製メディアの矛盾する動きは、党内部で議論が割れている可能性を示唆する。
 ある党関係者は一連の政策の狙いを経済格差の是正だとして「芸能界やIT大手はやりすぎた。金持ちの代表としてたたかれた」と指摘。一方で「文革の悲惨な記憶はなおも強い。文革には至らない」とみる。
 11月には党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(六中全会)が開かれ、党の歴史が議題になる。この関係者は「改革開放の弊害に踏み込んだ言及をするか否かによって、党指導部の考えが明らかになる」と語った。

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