ゴッホ展 この作品に注目!!(3)《サン=レミの療養院の庭》1889年

2021年9月15日 07時29分

フィンセント・ファン・ゴッホ ≪サン=レミの療養院の庭≫ 1889年5月 クレラー=ミュラー美術館蔵 ©Kröller-Müller Museum,Otterlo,The Netherlands

 1888年12月に最初の精神障害の発作を起こしたのち、ゴッホは病気に悩まされることとなる。そのため翌年の春は、季節の訪れを告げる美しい花々を描くことができなかった。5月、失意のうちに彼は自らサン=レミのサン=ポール=ド=モーゾール療養院に入院した。
 そして、ここで穏やかな生活を取り戻しながら、ようやく花々を描く機会に恵まれる。療養院の古びた庭園は、ちょうどバラやアイリスなどが咲き誇っていたのだ。
 草地の緑はやや単調だが、これが木々の色彩を際立たせている。赤や黄色、ピンクなどさまざまな色の花が咲き、これを目にした画家の喜びが感じられる。枝や幹、陰の暗い色調が奥行きをつくり、明るい色彩がほとばしるような、鮮やかな印象を生み出している。
 画面左手の黄色い建物は、アトリエとして用意された部屋のある棟の一部である。本作の出来に満足したのか、右下にはゴッホには珍しくサインが入れられている。(大橋菜都子=東京都美術館学芸員)
 ※次回は22日掲載。

◆18日から都美術館で

「ゴッホ展」は18日から12月12日まで、東京都美術館(東京・上野)で開催する。チケット販売中。日時指定予約制。詳細は「ゴッホ展」で検索。

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