<社説>最年少三冠 好敵手と育つ藤井将棋

2021年9月15日 07時58分
 将棋の藤井聡太二冠(王位、棋聖)が叡王戦五番勝負の最終第五局で勝ち、三つ目のタイトルを手にした。十九歳一カ月での三冠は羽生善治九段(50)の持つ最年少記録(二十二歳三カ月)を大きく更新する快挙だが、これも一つの通過点にすぎないと思わせるほどの成長ぶりにも拍手を送りたい。
 平成では羽生九段、昭和ならば谷川浩司九段(59)や故升田幸三、故大山康晴。将棋界で三冠を達成した棋士はこれまで九人いるが、いずれも将棋史に輝く人たちだ。藤井三冠はまだ十代で、早くもそうした先人と肩を並べて語られる棋士になったといえよう。
 それが、九歳で全国大会で優勝するなど才能が芽吹いた幼少の頃=写真=から支え続けた家族や地元の将棋教室、師匠の杉本昌隆八段(52)の指導の賜物(たまもの)であることは言うまでもない。さらに「優れた好敵手」の存在も大きい。
 今回の叡王戦の相手は豊島将之竜王(31)。人工知能(AI)が将棋の戦法を激変させた令和の時代に三冠を達成した実力者だ。プロ入り後からの二十九連勝など、次々に新記録を樹立した藤井三冠も苦戦が続く。今年、叡王戦と王位戦のダブルタイトル戦が始まる前の通算成績は一勝六敗だった。
 だが、叡王戦第五局の勝利で、通算成績は八勝九敗のほぼ互角になった。王位戦も第一局で完敗したものの、そこから四連勝でタイトルを防衛。さらに叡王戦では、大きな「壁」だった豊島竜王からのタイトル奪取だ。なおさら価値が高いといえよう。
 今年一月には、卒業まであと一カ月ほどだった高校を中退。将棋に専念する意思を鮮明にした。それもまた、豊島竜王らにも負けない棋力を磨くためだっただろう。AIがどれほど進化しても、やはり人を育て、成長させるのは人だと思いたくなる戦いぶりだ。
 敗れた豊島竜王も「課題がたくさん見えてきた」と語るように、まだ成長の途上にある。来月には防衛戦となる竜王戦が始まる。若い二人にはこれからも昭和の升田対大山戦や、平成の谷川対羽生戦のような名勝負を期待したい。

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