<社説>アフガンと日本 対米追随の総括を急げ

2021年9月15日 07時58分
 イスラム主義組織タリバンが暫定政権を発足したアフガニスタンで、日本の現地職員の退避が遅れている。退避問題の早期解決はもちろん、外交戦略の刷新のために過去二十年の総括を急ぐべきだ。
 今月上旬、日本政府はカタールに上村司政府代表を派遣し、アフガンに残された日本大使館の現地スタッフら約五百人の退避について、タリバン側と交渉を始めた。
 現地職員らの退避で日本は自衛隊機を派遣したが、救出できたのは日本人一人と第三国から依頼されたアフガン人のみ。菅義偉首相は邦人保護が最大目標だったと評価したが、欧米諸国や韓国などに比べ、失敗に等しい結果だった。
 初動の遅れや大使館員の早期出国といった問題点が指摘されており、速やかな検証が必要だ。NPOの現地職員も家族の帯同が認められず、出国できなかった。失敗の根底には、現地人の命を軽視する姿勢があったのでないか。
 そう疑いたくなる理由は、二十年にわたる米国のアフガン戦争と日本のかかわりにある。日本は二〇〇一年十二月から一〇年一月まで、自衛隊がインド洋上で米軍などへの給油支援を実施した。
 民生支援でも、警察官の育成などに総額七十億ドル(約七千七百億円)の援助を注いだ。いずれも米国の対テロ戦争の一部で、日本も戦争の当事国にほかならない。
 こうした政府の対応について、アフガンで人道活動に従事した故中村哲医師はかつて「いま考えるべきことは(現地のアフガン人たちのために)『まず、何をしたらいけないか』だ」と、日本の無批判な対米追随を批判した。
 国際貢献の内実が現地の人びとの生活より、対米関係の強化に軸足が置かれていたとすれば、本末転倒だ。戦争が終結したいま、政府は事実上の「参戦国」としての責任も含めて、総括すべきだ。
 イラク戦争について、英国や米国などは独自に検証し「誤った戦争」だったことを認めた。だが、米英などの武力行使を支持した日本は未検証なままだ。無責任な対応を繰り返すべきではない。
 撤退した米国が一段と内向きの傾向を深めている分、日本はより自立的な判断を迫られている。人道危機も伝えられるアフガンの安定に、日本が果たすべき役割は小さくない。新たな貢献策を見定めるためにも、過去二十年の政策を検証し、教訓を導くべきだ。

関連キーワード

PR情報