<祭典のあと 東京2020@静岡を終えて>レガシーをどう生かすか 自転車文化定着に宿題

2021年9月15日 08時20分

レガシーの観光面での活用を期待する後藤順一さん=伊豆市で

 「会場に来られなくてもSNS(会員制交流サイト)でつながれる。出場できて、たくさんの人に応援してもらえてうれしい」。伊豆市の伊豆ベロドロームを自転車トラック会場として開かれた東京五輪・パラリンピック。パラのトラック種目の初日に登場した伊豆の国市在住の藤井美穂選手(26)=楽天ソシオビジネス=は、無観客のスタンドを見ながらも、大会が開かれたことを喜んだ。
 開催そのものから危ぶまれたが、五輪では県内を拠点とする梶原悠未(ゆうみ)選手(24)=筑波大院=が女子オムニアムで銀、パラでは掛川市出身の杉浦佳子選手(50)=楽天ソシオビジネス=がロードレースとロードタイムトライアルで二冠を達成。県内各地で歓声が上がった。
 だが、五輪とパラを担当する鈴木学県スポーツ・文化観光部参事は「静岡県にとって五輪は前哨戦。本番はこれから」と力を込める。大会のレガシー(遺産)をどう生かしていくのか。開催県にとっては大きな宿題だ。
 「静岡を自転車の聖地に」。それが県が取り組むスローガンだ。トップレベルの国際大会誘致と、教育や健康維持への自転車の活用といった自転車文化の定着を二本柱に据える。
 大会は、その実現に向けて世界に静岡を発信する絶好の機会となるはずだったが、五輪は観客数が制限され、パラは無観客。子どもたちが観戦し、世界トップレベルの走りの迫力を体験してもらうはずだった学校連携観戦プログラムも、取りやめが相次ぎ、子どもたちに自転車競技を知ってもらう狙いは達成できなかった。

パラリンピックでは無観客での開催となった自転車競技=同市の伊豆ベロドロームで

 国際大会の誘致でも課題はある。ベロドローム内のスタンドや選手の家族向けの控室などは、今大会向けの仮設だったため、取り壊される。国際大会を見据えると施設整備も考えなくてはならないが、鈴木参事は「数億円規模の財源確保は簡単ではない」と懐の苦しさを語る。こうした課題を踏まえ、これから協議を本格化させ、具体的な方策を練っていく。
 一方、トラックなどの会場となった伊豆半島でも「聖地」への期待が高まりつつある。
 ベロドロームや日本競輪選手養成所があり、本格的に自転車を楽しむサイクリストが目立つようになっている。そこで、伊豆箱根鉄道修善寺駅(伊豆市)前でレンタサイクル店を運営するNPO法人「ステキな・ごえん」理事長の後藤順一さん(73)は「観光客の目がもっと自転車に向けられるようになれば」と期待する。店は市の補助金を受けながら、六人のスタッフで運営。利用者は二〇一六年の開業以降、五千人を超えた。貸し出す自転車はすべて電動アシスト付き自転車で、体力に自信があるサイクリストだけでなく、シニア層も自転車での周遊を楽しめる。車で回るよりも宿泊日数が多くなり、地元への経済効果も増す。
 大会では、ロードレースで県内の風景が世界に発信され、SNSでは伊豆半島に好印象を持ったとの英語の書き込みもあった。後藤さんは「大会で伊豆が世界に発信された今こそ、だれもが自転車で楽しめる伊豆にならないといけない」と訴えた。(高橋雅人、酒井大二郎、牧野新、渡辺陽太郎)

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