大規模宴会の減少にコロナ禍…政治家のラバーマスクで知られた「オガワスタジオ」116年の歴史に幕

2021年9月15日 12時00分
 歴代首相や米大統領らのラバーマスクで知られる玩具メーカー「オガワスタジオ」(さいたま市大宮区)が116年の歴史に幕を下ろす。今月で受注を終え、年内で全業務を終了する予定だ。パーティーグッズとして人気を集めたが、日本経済の低迷や宴会需要の減少で業績が悪化。さらにコロナ禍が追い打ちをかけた。 (前田朋子)

菅首相とトランプ氏のマスクを持つ田中社長。見たままに作ったところ、昨年の首相就任時のマスク(中央)は2019年の「令和おじさん」(左前)より血色が悪く見えるといい「お年を召されたんでしょうね」=さいたま市大宮区で

◆小泉元首相で人気爆発 一方、菅首相は…

 同社は従業員が10人余り。手作業を交えて製造したマスクを主に税込み2000~3000円台で売る。ネット通販もしているが、売り上げの7割を大手ディスカウント店での販売が占める。
 田中尚生社長(61)によると、同社は1905(明治38)年創業のゴム工場が前身で、風船などを作っていた。50年ほど前からマスク製造を始め、怪獣や動物なども得意分野。政治家のマスクをいつ始めたか記録はないが、2001年の小泉純一郎元首相の就任時に人気が爆発した。
 オバマ米元大統領や在任期間が長かった安倍晋三前首相も売り上げ増に貢献。トランプ米元大統領は累計2万枚超のヒット商品となり、今も注文が入る。一方、菅義偉首相のマスクは累計1500枚あまり。19年の新元号発表時に「令和おじさん」として作り、首相就任後は新たに型を作る必要がなく利幅が大きいと期待したが、伸び悩んだ。

◆「芸をやれと上司が言ったらパワハラに」

 たびたびメディアでも取り上げられたが、近年は景気の低迷で忘年会など大規模な宴会が減った上、「芸をやれ、なんて上司が言ったらパワハラになってしまう」(田中社長)。
 さらにコロナ禍の影響が大きかった。東京五輪・パラリンピックで来日外国人の需要があるという期待は、入国制限で泡と消えた。
 本来なら9月はハロウィーン向け仮装商品の製造で忙しい時期だが、昨年と今年はイベントの中止が相次ぎ、5ラインある工場は1ライン動かすかどうか。最盛期にはマスクだけで年間1億2000万円ほどあった売り上げは、今年は6000万円ほどに減る見込みという。

◆「岸田さんより河野さんは作りがいがあったかな」

 工場設備の老朽化や更新の難しさもあり、関連会社の鋼材商社「ハヤカワカンパニー」(名古屋市西区)への吸収合併を決めた。業務終了が迫るため、自民党総裁選の候補者らのマスクを作る予定はない。田中社長は「眼鏡が必須で工程が多い岸田(文雄・前政調会長)さんより、顔に特徴のある河野(太郎行政・規制改革相)さんは作りがいがあったかな」と残念がる。
 マスク作りの手順書などは一切なく、技術は全て先輩社員から口伝で継承されていた。職人芸と複雑な工程を経て出来上がる製品は芸術品のよう。田中社長は「120年近い歴史で培われた技術が途切れてしまうのは寂しい」と話し、今後は写真や動画などで製造工程を保存するという。

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