中国電力は「拒否」 周辺自治体の同意権要求に 島根原発2号機再稼働を巡り深まる溝

2021年9月16日 06時00分
 日本で唯一県庁所在地にある中国電力島根原発2号機(松江市)について、原子力規制委員会は15日の定例会合で、事故対策が新規制基準に適合するとした審査書を決定し、主要な審査を終えた。今後、再稼働に向けた地元同意の手続きが本格化する。立地自治体以外の周辺自治体が手続きへの参加を求めているが、中国電が拒否し、溝が埋まらない。(小野沢健太)
 10年半前の東京電力福島第一原発事故では放射能汚染が広範囲に及び、各原発周辺では立地自治体に限られた事前了解権の範囲を広げようとする動きがある。2018年に東海第二原発(茨城県)の再稼働を巡る事前了解権が30キロ圏6市村に拡大したが、それ以外は立地自治体や電力会社の反対で実現していない。
 島根原発の再稼働で事前了解権があるのは、原発が立地する松江市と島根県のみ。中国電との協定が根拠だ。このため、隣接する鳥取県を含めた30キロ圏内の6自治体も同様の権利を盛り込むよう協定の改定を求め続けている。
 これに回答をしてこなかった中国電は、島根2号機が新基準に事実上適合した後の今年8月、島根の出雲、雲南、安来の3市に「事前了解権は困難」と拒否した。鳥取県と同県境港市、米子市の3自治体には、いまだ回答していない。
 中国電は「事前了解権は、建設工事などへの許可権限を持つ立地自治体の固有の権限。周辺自治体に広げることは協定のあるべき姿とは異なる」と主張する。

◆島根県側は拒否されても同意権要求 鳥取県側は無回答に「遺憾」

 周辺自治体側は不満を隠さない。出雲市の担当者は「立地自治体も周辺も原子力災害のリスクは同じ。発言の権利が等しく与えられるべきだ」と訴える。雲南、安来の両市も、中国電に再考を求めるという。
 袖にされた鳥取県側の3自治体は8月、中国電に「回答しない対応は甚だ遺憾」と批判。15日に東京・六本木の規制委庁舎内で取材に応じた中国電の大元宏朗東京支社長は「速やかに回答したい」と釈明した。
 中国電は島根2号機の対策工事を、22年3月までに終える計画。新設の3号機=新基準審査を申請済み=も含めた対策工事に6000億円程度投入する見込みで、10年近く停止したままの原発の再稼働が悲願となっている。地元同意のハードルを高くすれば、再稼働が遅れることは必至だ。
 中国電の対応を受けて、島根県は9月14日、県内周辺3市との合同会議を設けた。3市の意見を再稼働の同意可否の判断材料にするという。県の担当者は事前了解権を広げる議論を「中国電と3市の問題」と関与しない姿勢を明確にし、「専門家や国の意見も踏まえ、知事と3市長が意見交換していく。判断までには時間がかかる」と話した。

島根原発の30キロ圏 原発がある松江市と島根県の出雲、雲南、安来の3市、鳥取県の境港、米子の2市が入る。圏内人口は約46万人で、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)の約94万人、中部電力浜岡原発(静岡県)の約83万人に次いで多い。圏内は避難計画の策定が義務付けられている。

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