<社説>習氏の共同富裕 格差是正が強権的だ

2021年9月17日 07時16分
 中国の習近平政権が、国民全体を豊かにするという意味の「共同富裕」の実現に本腰を入れ始めた。深刻化する経済格差の是正を進める政治方針であり、その方向自体に異論はないが、大企業や富豪に巨額の拠出を求めるような、習氏の直線的かつ強権的な手法には疑問符がつく。
 習氏は八月、経済政策を討議する共産党の重要会議で「共同富裕は社会主義の本質的な要求だ」と演説。来年からの党総書記三期目を見すえ、一九五〇年代に毛沢東が唱えた共同富裕実現を目玉政策とする考えを示したといえる。
 会議では、税制や社会保障政策などの改革により、富を平等に行き渡らせ、格差を縮めて中間層を拡充する政策が打ち出された。
 格差の拡大は、中国が直面する重要課題であり、何らかの思い切った改革が必要なことは論を俟(ま)たない。貧富の差を示すジニ係数は中国政府の統計がある二〇一六年でも〇・四六五で、「社会的騒乱の警戒ライン」とされる〇・四を軽く超えている。
 しかし、八月の会議で示された「高すぎる収入の合理的な調整」とは、破格の収入がある芸能界の規制を強めたり、巨額利益をあげる企業に寄付名目で社会への還元を事実上強制するといった内容で、あまりに強引である。
 政府方針に敏感に反応し、ネット通販最大手アリババ集団は共同富裕の促進事業に一千億元(約一兆七千億円)の寄付を表明した。
 中国当局は八月下旬、人気女優、鄭爽氏の出演料をめぐる巨額脱税事件を摘発。約三億元(約五十一億円)の追徴課税と罰金を科すと発表した。党中央は芸能界の拝金主義が「社会風紀を汚染している」との見解だ。中国紙・環球時報も「芸能人が影響力を富に変えている」と主張した。
 だが、富裕層に対する庶民の怒りをあおる手法には、階級闘争を継続しブルジョア批判を徹底した毛の文化大革命に重なるものがあり、中国のネットに「文革のような激しい政治運動になりかねない」と懸念する投稿が目立つ。
 何よりも、共産党や政府などの権力と関係のある人だけが、正当な努力なしでも豊かになってきた社会主義市場経済のいびつな社会構造にメスを入れることが最重要である。その変革がなければ抜本的な格差是正はできないし、中間層の健全な発展もありえない。

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