自民党総裁選で話題に上る「核融合」発電 言われて久しい「実現まで30年」

2021年9月17日 14時00分
 自民党総裁選ではエネルギー政策を巡り、「核融合」が話題にのぼってきました。立候補を表明した岸田文雄前政調会長と高市早苗前総務相は、温室効果ガスの排出を抑えるための発電手段として、核融合の技術開発を進めるとしています。次世代の核エネルギーとして30年以上前から国際研究計画が進んでいますが、実用化のめどは立っていません。(永井理)

◆燃料1グラムで石油8トン分のエネルギー

Q 普通の原子力発電とはどう違う。
A 普通の原発は、ウランなど重い元素が核反応で壊れるときに出るエネルギーで発電します。核融合では逆に、水素などの軽い元素同士を衝突させてくっつけます。すると、中性子が放出されて燃えかすとしてヘリウムが残ります。この中性子のエネルギーを熱に変えて発電します。燃料1グラム当たりおよそ石油8トン分のエネルギーが出ます。ウラン燃料の約4倍です。
Q 放射性廃棄物は出ないのか。
A 原発の使用済み核燃料のような強い放射能を持った廃棄物は出ませんが、放射性廃棄物はむしろ多く出ます。中性子にさらされる炉の内壁などの大型機器を数年ごとに交換しなければならないからです。
Q 燃料は安全か。
A 核融合の場合も燃料に放射性物質を使います。太陽では普通の水素が核融合反応を起こしますが、同じ反応を起こすのは難しいため、反応しやすい重水素や三重水素(トリチウム)を使う計画です。トリチウムは東京電力福島第一原発の汚染水問題でも知られるように放射性物質です。核融合炉では気体の状態で扱うので、漏れて拡散しないよう注意が必要です。

◆超高温という壁 実用化のめど立たず

超高温の燃料を閉じ込める磁場を生み出す巨大なD型コイルの組み立て作業=フランス南部サン・ポール・レ・デュランスで(ITER機構提供)

Q 運転の安全性は。
A 原発は燃料タンク自体を少しずつ燃やすようなものです。制御を誤ると大きな熱が出続け、炉心が溶けたり、爆発が起きたりする可能性があります。一方で、核融合炉は燃料を供給しながら運転するので、元栓を閉めれば反応は止まります。また核融合が起こる条件は非常に微妙なので、故障などで少し外れるとすぐに止まります。
Q 実現はいつごろ。
A トリチウムや重水素を1億度以上に加熱して一定の密度を保ち続ける必要があります。太陽の中心温度の1600万度よりもはるかに高温で、それに耐えられる容器がありません。その代わりに、磁力で空中に浮かせて閉じ込める方法を模索していますが、これが難しく、十分なめどが立っていません。

建設が進むITER施設=フランス南部サン・ポール・レ・デュランス で(ITER機構提供提供)

 本格的な実験に向けては、日本と欧米、ロシア、中国などが共同で国際熱核融合実験炉(ITERイーター)をフランスに建設中です。その成果を基に2050年ごろには実用規模の発電にめどを付けるとされます。核融合発電は昔から、実現まで30年と言われたまま実現せず、「逃げ水」という批判もありました。最近はベンチャー企業の参入など変化も見られますが、決定的に実現が早まる技術があるとはいえない状況です。
Q 日本でも研究しているのか。
A 核融合科学研究所(岐阜県)と量子科学技術研究開発機構(千葉市)がそれぞれ大型の実験装置で、核融合に必要なプラズマの扱いなどを研究しています。ただ、核融合科学研究所の実験装置は来年度いっぱいで本格運転の予算が打ち切られ、より基礎的な研究に方向転換する予定です。

おすすめ情報