ラジオ界の「80代」大ベテラン2人 文化放送・伊東四朗/TBS・大沢悠里

2021年9月19日 07時15分
 民放キー局の地上波は、高齢司会者の番組が少なくなりつつあるが、ラジオでは、八十代がメインパーソナリティーを務める番組が好評だ。文化放送「伊東四朗 吉田照美 親父・熱愛(おやじ・パッション)」の伊東四朗(84)と、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版」の大沢悠里(80)はその代表格だ。放送はともに土曜午後三〜五時。敬老の日(二十日)を前に、二人の人気、健康の秘密などに迫った。 (鈴木学)

◆楽しく自然体で話す

「ラジオはいくつになっても飽きません。伊東さんに一言? どの仕事も一定水準以上でこなしている。偉いなと思います」と話す大沢悠里=TBSラジオで

 「皆さんこんにちは、大沢悠里です。九月十一日土曜日、通算八千七十九回目を迎えました。『9・11』というと、二十年前を思い出しますね…」
 ラジオから響く声は柔らかくよどみがない。耳にとても心地いい。「ラジオは何かをしながら聴く人が多いから、邪魔をしないように。BGMみたいなものでいいんです」と大沢流トークの極意を明かす。ゲストとのトークが一つの売りの現在は、いい話を引き出すことに腐心。ゲストが誰か分かるよう折に触れて名前を呼び、途中から聴く人も置いてけぼりにしないことも信条とする。
 月−金曜の人気番組だった「ゆうゆうワイド」。三十年を機に朝から四時間半の放送を勇退、今の後継番組も六年目に入っている。「ゆうゆうワイド」といえば、既に幕を下ろしたが、「お色気大賞」が名物コーナーで有名だ。

お色気大賞の名コンビ、さこみちよ(右)と

 「艶っぽい内容のお便りを声色を使って読んだりしたら、いっぱい来るようになってね。ラジオはリスナーに寄り添うことが特に大事で、クスッと笑ってもらえればいいんです。ただ、作為的な投稿が増えて、年も年なのでやめちゃった。僕が死んだ時は『お色気大賞』の音声が流されるのかな。勘弁してほしいな」と苦笑する。
 ラジオ界の巨人にテレビとの違いを聞いてみた。
 「テレビは『いいことを言おう』とか、『面白いことを言わないと、次に使ってもらえない』とか、楽しむより考えることが多い。ラジオは自然体で話せるからね」
 では、健康の秘訣(ひけつ)は? 「僕は体は借り物だと思っているの。食べ過ぎたり、無理をしたりせず、大事に返さなければって思っています」。話を聞いて考えるため、脳にもいいと思われる。「どの局でもいいから聴いてほしいね」。ラジオ愛にあふれている。

◆失礼ギリギリの反応

「放送前の打ち合わせはしません。ない方がいい。大沢さんに一言? ラジオの大先輩。1回一緒にやりたいと思ってます」と話す伊東四朗=文化放送で

 伊東が「おじいちゃん」として、番組の相方・吉田照美(70)と繰り広げるコント「オヤジ大学」。番組の聞きどころの一つだ。
 今夏「小バエ、ショウジョウバエ、インスタ映え」のフレーズがお気に入りだったおじいちゃん。「教授」役の吉田をいじったり、逆にやり込められたり。喜劇役者の顔がのぞく会話劇が楽しい。「あたし一人だと暴走します。吉田照美が戻してくれるから安心してできるんです」と笑う。
 「親パツ」もおよそ四半世紀。以前には同じ局で、四時間の生放送もやっていた。ラジオのよさとは?
 「あたしは元々無口なんです。そういう人間に四時間の生をやらせたら面白いと思ったんだろうね。テレビは間が空いても顔でごまかせるけど、ラジオは二秒空いたら放送事故に思われる。この緊張感がいい。追い詰められる感じが好きなの。昔、台本が全くできていない芝居が結構あって鍛えられたからね」。緊張感がいい方向に作用しているようだ。

1997年4月にスタートした「親父・熱愛」。当時の伊東四朗(右)と吉田照美(文化放送提供)

 番組人気は「お便りに対する失礼ギリギリの反応を面白がってもらっているんだと思います」と推測。リスナーはそんな攻めの直言が聞きたいのだ。「そうですかね」と頭をかきながら言う。「八十四年も生きていると、いろんなものがたまる。それを小出しにすると何とかなるもんです」
 毎日欠かさないのがウオーキング。取材日は最高気温が三〇度超だったが、休憩を含め一時間十五分、五キロを歩いたという。そうして健康を維持しており、スタッフから「百歳までやってもらって歴史をつくる」と言われているそうだ。
 「ただ、時々意識がどこかに飛んでいるようで『伊東さん、帰って来て』と言われます。でもね、自分では年齢を感じさせないようにしているつもり。同世代の人にも年寄りだと思わないようにしてほしい。十歳サバを読むぐらいの心持ちでいいのではと思います」

◆人生経験、語りに生きる

 放送業界に詳しい放送作家の石井彰は、ベテランが活躍するラジオについてテレビとの違いや、ラジオと人生のベテランたちの親和性を挙げる。
 ◇ 
 特にAMラジオは、大人が聴いている。子育ても介護も経験がない若い人がベテランと同じ言葉を使っても、実感なのか、知識なのかが分かってしまう、人間が見えるのがラジオ。ラジオパーソナリティーには人生経験が求められる。
 話し掛ける時、テレビ番組のファンは「見てますよ」と言いますが、ラジオのファンは「あの話がよかったね」と言う。ここが大きく違う。テレビは見た目が大きくて、見てはいるけれど、話の内容はあいまい。ラジオは味のあるしゃべりが大事で、深く聴かれている。2人以外では東京なら森本毅郎さん(82)=写真(左)、大阪だと浜村淳さん(86)=同(右)、道上(どうじょう)洋三さん(78)ら70代、80代のベテランたちも味のある放送をしています。
 久米宏さんがこんなことを言っていました。「テレビカメラの前に立つのは、ガラスが突き刺さってくるようなものだ」と。それだけしんどいらしい。ラジオは伝統芸能と似ているかもしれない。歌舞伎や能などのようにベテランには味が出る。芸達者な人が各地にいて、それぞれ人気がありますよ。 (談)

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