[孫のおはなし] 岐阜県美濃加茂市 山本逸夫(72)

2021年9月19日 07時50分

◆わたしの絵本

イラスト・まここっと

◆300文字小説 川又千秋監修
[雲に乗ってみたい] 静岡県磐田市・パート・51歳 鈴木知恵美

 「あの雲に乗ってみたいなあ」
 娘が言った。
 空なんて、いつでも見られるのに、久しぶりに空を見た気がした。
 青い空にフカフカの白い綿みたいな雲が浮かんでいる。
 「そうだね! ママも乗りたいよ」
 白い雲に乗ってる娘と私を想像してみた。トランポリンみたいに跳ねてみたり、空から見る景色を楽しんだり。
 あの雲に乗ったら、勉強や仕事や家事や、めんどくさいこと全部忘れちゃえそうだよね。
 「あ、でも乗れるわけないかあ。あれって水滴だもんね。理科で習った」
 中学生になった娘の顔が急に大人びて見え、われに返る。
 「塾、送ってくね」
 車に乗ろうとして、「また一緒に雲見ようよ」と、口をついて出た。
 そんな時間が、これからも大切な気がする。

 子どもでも、大人でも、空を見上げて必ず空想したことがあるはずです。その上を駆け回ったり、飛び跳ねたり寝そべったり。雲の正体が分かっても、夢見る気持ちが消えてしまうわけではありません。

[銀婚式の贈り物] 名古屋市天白区・会社員・56歳 伊藤秀司

 その日、カレンダーについた丸印を見て気がついた。今日は二十五年目の結婚記念日だ。
 あっという間だなと思うのだけど、お互いに真っ黒だった髪に白いものが交じっているのだから、年齢を重ねてきたのは間違いない。
 振り返れば、ささいなことで喧嘩(けんか)ばかりしてきた二十五年だ。
 「子は鎹(かすがい)」と言うが、娘がいたからこそ、この日を迎えることができたと思う。
 その晩の食卓、うれしいことに娘から食事券をプレゼントされた。カタログになっていて好きな店を選べるものだ。食事もそこそこに妻との話し合いが始まる。
 私は和食が食べたいと主張するが、妻はフランス料理がいいと言い、いつものごとく喧嘩になる。
 それを見た娘は、大きくため息をついた。

 毎年、ご夫婦二人だけの思い出を積み重ねて巡ってくる結婚記念日。大きな節目の銀婚式を、こんなふうに祝ってもらえるなんて最高ですね。おなじみの夫婦げんかも、もはや熟練の恒例行事。


関連キーワード


おすすめ情報