<ひと ゆめ みらい>コーヒーで地域憩いの場 全學寺副住職・大島俊映(としあき)さん(38)=足立区

2021年9月20日 06時39分

「コーヒーをいれるのも、かなり上達しました」と大島さん=足立区で

 「コーヒー飲んでいってください」
 相手の警戒心を一瞬で解いてしまう人懐っこい笑顔とコーヒーの香りに誘われ、道行く人が足を止める。
 「どこに住んでいるんですか」。大きなテントの中に設置されたベンチのあちこちで初対面同士がコーヒーを片手に会話を楽しむ。
 二〇一七年十二月から始まった「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」はその名の通り、週末に無料でコーヒーを提供。地域住民の憩いの場として定着している。
 場所は、自身が副住職を務める足立区古千谷本町の全學寺(ぜんがくじ)の駐車場だ。
 同寺は十五世紀に創建され、昔から地域の人に愛されてきた。自身も大学時代から修行を重ね、十六年前から副住職を務める。
 「寺は昔から人をつなぐ場所だった」と感じているが、葬儀や法要以外で寺を訪れる人は減っている。
 〇八年に日暮里・舎人ライナーが開業し、のどかな田園地帯だった寺の周囲も一変した。新しい住宅が立ち並び、若い世代が増えたが、住民同士の交流は希薄になっている。
 「人口が減っていく中でも、人のつながりがあれば生活や心の豊かさを感じられる。寺がその中心になればいい」
 バリスタだった「むっちゃん」こと妻の睦美さん(31)が活躍できる場所をつくりたいという思いもあり、コーヒースタンドの開設を思いついた。
 コーヒーにもこだわった。原宿の有名珈琲(コーヒー)店から仕入れたスペシャリティーコーヒーと呼ばれる高品質の豆を使い、一杯一杯ハンドドリップでいれる。
 「人が集まるための入り口としてコーヒーがある。同じコーヒーでも、多くの人が親しめる上にきちんと価値があるものでないといけない」
 無料なのは気軽に立ち寄ってもらいたいからだ。
 コーヒーのお礼にと、お菓子を差し入れてくれる人もいる。地域の情報交換の場になるなど新たなつながりも生まれている。
 今年六月に立ち上げた地域の子どもたちへの食事支援プロジェクト「にぎりむすびギフト」も、スタンドを訪れた子どもの支援団体のメンバーから「コロナ禍で食事に困っている子どもが増えている」と聞いたのがきっかけだった。
 「いろんな人にコーヒースタンドに来てもらって、交流がうまれ、また新しいコミュニティーをつくって、つながりを広げていってもらいたいですね」。コーヒーの香りとともに夢は広がる。(砂上麻子)
   ◇
<ゼンガクジ フリー コーヒースタンド> 足立区古千谷本町2の22の20。最寄りは日暮里・舎人ライナー舎人駅。土日のどちらか午前10時〜午後4時。オープンの日はツイッター@zengakuji12で確認

関連キーワード

PR情報