水郡線46駅をシャーペンで描いた 福島の「応援画家」佐々木さん、緻密に 「利用者もっと増えれば」

2021年9月20日 07時27分

常陸大宮駅前を描いた絵(いずれも佐々木麻里さん提供)

 JR水郡線の全46駅舎をシャープペンシルで描いた若い女性が、沿線住民の熱い視線を集めている。「水郡線応援画家」を名乗る福島県石川町の佐々木麻里さん(28)だ。「せかせかしていないのが水郡線の良いところ。山肌を縫うように流れる久慈川が、日々の暮らしを結んでいる」と魅力を語る。(出来田敬司)
 水郡線は、水戸〜安積永盛(あさかながもり)(福島県郡山市)間の一三七・五キロと上菅谷(那珂市)〜常陸太田間の九・五キロを結ぶローカル線だ。車窓から眺める久慈川や里山が美しく、「奥久慈清流ライン」の愛称を持つ。
 佐々木さんは、水郡線の四十五駅と、乗り入れる郡山駅の計四十六駅の作品を約二年かけて完成させた。
 作品の大きさはいずれもB4サイズ。常陸大宮駅はロータリーから駅舎を望む風景、水戸駅は乗客が車両からホームに降り立つ様子が緻密なタッチで表現されている。使用するのは太さ〇・三ミリ、HBのシャーペン一本。「出来上がるまで一カ月近くかかる」と笑う。
 佐々木さんはもともと漫画家志望だった。漫画の専門学校を卒業した後、福島県内の会社に勤める傍ら、学校生活や幕末がモチーフの漫画を出版社に持ち込んだが、採用されなかった。「編集部でこてんぱんに批評され、自信がなくなった」と振り返る。
 そんな佐々木さんが水郡線に着目したのは、茨城や福島が記録的な大雪に見舞われた二〇一四年二月のこと。最寄りの磐城石川駅(石川町)から郡山駅へ向かう途中、「途中で目の前が見えなくなるほど」の大降りになった。乗っていた列車は七時間近く立ち往生。その間、他の路線の運行状況をアナウンスしたり、代行バスを手配したりする運転士と車掌の姿に心を奪われた。「乗客の不安を解消しようとする意識がひしひしと伝わってきた」

佐々木麻里さん

 当初は水郡線も漫画の題材に取り上げたが、なかなか評価されなかった。知り合いの風景画家から「絵の方が向いているのでは」とアドバイスされ、郡山駅をシャーペンでスケッチすると、思いのほか達成感があった。一九年四月、小塩江(おしおえ)駅(須賀川市)からスタートし、茨城方面に南下していった。
 同年十月には、台風19号による久慈川の増水で大子町の橋梁(きょうりょう)が崩落。不通となる大災害に「三日間落ち込んだ」が、今年三月の全線運転再開の直前、最後の水戸駅を仕上げた。
 これまで郡山市内や常陸大子駅で個展を開いたが、「水郡線に思い入れのある人が多くて驚いた」と舌を巻く。来場者の一人は、今や無人駅となった谷田川駅(郡山市)の国鉄時代の写真を手に、住民と駅員が親交を深めていた往時をとうとうと聞かせてくれた。
 作品は、マグカップや絵はがきに転写され、新たなニーズを生んでいる。佐々木さんは「沿線が元気になり、もっと多くの人が路線を利用してくれれば」と期待する。

水戸駅2番線ホームを描いた絵

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