SDGs国連採択6年 持続可能な開発、自らの問題と認識を 当時の首席交渉官に聞く

2021年9月21日 06時00分
 2030年の世界のあるべき姿を17のゴール(目標)で示したSDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されてから25日で6年を迎える。社会、環境、経済をいずれも持続可能にするという理念は、コロナ禍という試練にさらされている。国連で交渉を担当した外務省のみなみひろし大使(広報外交担当など)にSDGsが世界に与えた影響と今後の見通しを聞いた。(聞き手・早川由紀美)

SDGs 2015年9月25日に国連総会で採択された。17目標とそれを具体化した169のターゲットから構成され「誰ひとり取り残さない」を基本理念とする。小・中・高校の新学習指導要領では「持続可能な社会の創り手」が目標に盛り込まれている。持続可能な開発ソリューションネットワークなどによる21年版持続可能な開発リポートで、日本のSDGs達成度は165カ国中18位。「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」「パートナーシップで目標を達成しよう」の5目標で「主要な課題が残されている」と指摘されている。

◆たこつぼ的な発想はやめよう

SDGsについて話す南博大使

 ―SDGsが国連で採択されて6年になる。
 「採択された当時、日本国内で関心を持っている人はほとんどいなかった。今は多くの人がバッジを着け、学校でも学ぶ内容となりうれしい驚きがある。問題はどのように実践していくかだ」
 「当初SDGsは地球環境の問題を主に取り扱うべきだという主張がされた。国連の議論の中で途上国の貧困の問題も一緒に取り扱うべきだということになり、経済と環境の問題が一緒になっていった。交渉では環境だけ、貧困だけというたこつぼ的な発想はやめようということがよく言われていた。各ゴールの相互の関連性を意識して政策を実施する必要がある」

◆パンデミック、AIの適正利用などが新課題

 ―これまでの成果と見えてきた課題は。
 「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指すのだという潮流が強まり、日本政府も2050年という目標を打ち出した。実質的な交渉が行われていた13~14年には気候変動に対して後ろ向きの国もあった。科学界、市民社会の後押しもあり独立したゴールとなった。気候変動が危機的な問題だという認識は時間を追って高まっており、今から振り返れば独立ゴールにしたのは正しい選択だった」
 「今後の課題は主に3点あると考えている。SDGsはパンデミック(感染症の大流行)に触れていない。交渉当時は新型コロナのような事態が起きるという警戒感がなかった。2番目は科学技術の適正な使用について踏み込んでいないこと。AIなど先進技術は途上国の問題解決に役立つこともある半面、軍事的用途にも使われる。3番目は不平等の問題。コロナで格差が広がり、貧困撲滅が非常に難しくなっているという報告書を国連が出した。国際社会に不平等を是正するメカニズムが十分には備わっておらず、放置すれば社会に与える負の影響が大きい」
 ―SDGsが目指す社会に近づく道は。
 「教育はパワフルな手段だと思う。人々がそれぞれ将来のあるべき姿を考えるようになって、いろんな選択肢が出てくる。SDGsは、非政府組織(NGO)や学者、経済界の人などの意見も反映されている。自分たちの問題として認識されたことが、世界共通の目標づくりに寄与する。今、SDGsの勉強をしている若い人たちには自分たちが直接関与できるということを是非、認識してほしい」

みなみ・ひろし 1959年生まれ。東京大法学部卒業。ケンブリッジ大学経済学修士。83年外務省入省。2012~15年、日本政府の首席交渉官としてSDGs交渉を担当。

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧