<自民党総裁選>経済対策 アベノミクス「3本の矢」 継承か修正か

2021年9月21日 06時00分
 大規模な金融緩和と財政出動、成長戦略を「3本の矢」としたアベノミクスは、日銀による国債の大量購入などで「低金利がしばらく続く」と国民に期待させ、拡張財政と組み合わせることで投資や消費の活性化をめざした。
 極端な円高が是正されて輸出産業を中心に企業は潤い、株高も演出した一方で、「2年で2%」の物価安定目標は8年たっても達成できないまま、国の借金は積み上がった。個人の実質所得も増えず、株などの資産を持つ人と持たない人の格差は広がった。
 自民党総裁選の4候補のうち、アベノミクスの継承を最も前面に打ち出すのが高市早苗前総務相だ。「サナエノミクス」として2%の物価目標達成まで基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標を凍結すると表明。アベノミクス以上に緩和的な姿勢を見せる。
 「PBが赤字でも、名目金利を上回る名目成長率を達成していけば財政は改善する」というのが、主張の根拠だ。成長率を高めるために、感染症や自然災害に備える投資を「10年で100兆円規模」の国債を発行して行うとする。
 岸田文雄前政調会長も、「間違いなく経済を成長させた」とアベノミクスを評価する。2%物価目標も「外すとおかしなメッセージを与える」として堅持を表明した。数十兆円規模の経済対策も打ち出す。
 ただ、アベノミクスが前提とした「富裕層が豊かになれば、貧困層に恩恵がある」とのトリクルダウン理論は採らない。コロナ禍を経て格差は拡大したとして、是正のため「成長の果実の分配」を訴える。
 河野太郎行政改革担当相も富の再分配を主張する。アベノミクスを「企業は利益を上げたが、賃金まで波及しなかった」と総括。「企業から個人へ」と訴える。2%物価目標についても「達成はかなり難しい」と明言し、「金融政策はある程度日銀にまかせないといけない」とも述べた。
 野田聖子幹事長代行は、今回の総裁選ではこれまで金融政策への言及は目立たないが、2017年に党内有志とアベノミクスを検証する勉強会に参加したほか、18年にも大規模緩和の副作用を指摘し、アベノミクスの転換を主張した経緯がある。
 高市氏、岸田氏の政策では、政府の借金を日銀が引き受ける事実上の「財政ファイナンス」が続く見通しで、政府・日銀の負債は増え続ける。一方、河野氏や野田氏の政策では金融政策の正常化を模索する可能性がある。
 立憲民主党は、アベノミクスを検証する委員会を立ち上げて衆院選での争点化を図る。格差拡大や労働分配率の低下を批判するとみられるが、これにとどまれば岸田氏や河野氏との差別化は難しい。(皆川剛)

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