不人気首相の交代を優先 憲法軽視の異例の事態 臨時国会を10月4日召集、衆院選初の任期越え 

2021年9月22日 06時00分
 政府は21日、菅義偉首相の後任首相を選出する臨時国会の10月4日召集を閣議決定した。憲法53条に基づく野党の召集要求は2カ月以上も放置したのに、自民党総裁選を受けて国会を開く形となった。それに伴い、次期衆院選は初めて議員任期満了(10月21日)を越えて行われるのが確実。不人気の首相を交代させて選挙戦を有利に進めたい自民党の党利党略により、憲法を軽視するような異例の事態となる。(川田篤志、大野暢子)

◆憲法学者「汚いやり方」

 臨時国会で新首相が選出されると直ちに組閣し、新内閣を発足させた後、副大臣・政務官人事などを行う。投開票日を慣例通り日曜として、議員任期内に衆院選を行うには、最も遅くて10月5日公示、17日投開票にしなければならず、総裁選日程に合わせて4日に臨時国会を開いていては事実上、間に合わない。
 衆院選の任期越えは過去に例はなく「憲政の常道に反する」という懸念も憲法学者に根強い。早稲田大の水島朝穂教授は「任期満了をまたぐことがただちに違憲とは言えないが、決して望ましいことではない」と指摘する。
 その上で問題視するのは、首相は今月3日に退陣表明したのに、総裁選の前倒しなど任期越えの衆院選を避けるための対応が行われなかったことだ。水島氏は「新型コロナウイルスの感染が落ち着いたところで選挙をすれば負けないという政権の事情で先送りしている。憲法の枠組みを踏みにじる非常に汚いやり方だ」と批判する。

◆野党の要求は拒んだが…

 立憲民主党など野党4党は7月16日、新型コロナ対応を巡って「国民の英知を結集させるしかない」などとして、憲法53条に基づく内閣への臨時国会召集要求書を提出。その後も首相との質疑を求めたが政府、与党は拒み続けた。
 加藤勝信官房長官は21日の記者会見で「首相指名が自民党総裁の交代に伴って必要であることから、今回の臨時国会を召集する」と、総裁選への対応で国会を開くことを認めた。
 慶応大の横大道よこだいどう聡教授は憲法53条の趣旨について「議会の少数派による行政監視を可能にし、政府にも行政権の行使の説明責任を果たさせることだ」と解説する。
 総裁選に立候補している4氏はいずれも首相に就任すれば所信表明演説し、衆参本会議で各党代表質問も受ける意向を示すが、武蔵野美術大の志田陽子教授は「代表質問は質疑が一方通行で、細かい問題に光が当たりづらい。それだけの議論で済ませ、野党の召集要求に応じたと言うなら、政府の姿勢は不誠実だ」と強調。予算委員会などの本格的な論戦を展開した後に衆院選を行うべきだと訴える。

国会召集と衆院議員の任期 憲法53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会を召集しなければならないと規定。時期は明示していないが、那覇地裁は昨年6月、内閣の法的義務を認めた上で、要求を拒めば「違憲と評価される余地がある」との判断を示した。衆院議員の任期は憲法45条で4年間、解散の場合は満了前に終了すると定める。衆院選は、公職選挙法で任期満了前30日以内に行うと明記する一方、この期間中に国会が開かれていたり、衆院が解散されたりすれば、例外的に日程を遅らせることを認めている。

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