東京都の基準地価、新型コロナの影響で商業地9年ぶり下落 歌舞伎町で10%超

2021年9月22日 06時00分
 東京都は21日、土地取引の指標となる都内1280地点の基準地価(7月1日時点)を公表した。商業地の平均は前年比マイナス0・3%で、2012年以来9年ぶりに下落した。都の担当者は「長引く新型コロナ禍の影響で店舗の収益が低下し、商業地の下落に表れた」としている。
 一昨年は6・8%、昨年は1・3%の上昇だった。中央、新宿区など都心の区を中心に下落地点が増え、繁華街やオフィスの集まる地域で下落幅の大きい地点が目立った。区部は昨年1・8%の上昇だったのが、今年はマイナス0・3%に大幅に落ち込んだ。一方、多摩地域は昨年マイナス0・4%だったが、今年は0%(変動なし)だった。

東京都内の商業地で下落率がトップとなった新宿区歌舞伎町1丁目の基準地周辺ではテナントの空きが目立つ

 今年、下落率が最も高かった地点は新宿区歌舞伎町1のビルで10・1%。中央区銀座7で9%、銀座6も7・2%下落した。
 都内全域の全用途(住宅地、商業地、工業地など)の上昇率は0・1%で、9年連続プラスを保ったが、上昇幅は一昨年の4・1%、昨年の0・6%より縮小した。(土門哲雄)

◆「営業できないのに家賃は下がらない」銀座でため息

 21日公表の基準地価で、東京都内の商業地の下落率上位10地点のうち9地点を銀座と新宿地区が占めた。日本を代表する2つの歓楽街で働く人たちは何を思うのか。
 
 「営業はできないのに、家賃は下がらない。希望を持てないのが飲食店の撤退が続く理由でしょう」

感染防止のための国や都からの要請には「すべて応じてきた」と話す保志雄一さん。今年、店を開けた日はほとんどない=東京・銀座で

 バーやスナック、クラブなどでつくる「銀座社交料飲協会」の保志雄一会長(64)はため息をついた。コロナ禍前の昨年初め、1200店を超えた会員は、現在、990店にまで減った。
 保志さんは、経営する8店舗のうち6店舗が銀座にある。緊急事態宣言の延長が繰り返される中、公的支援をフル活用し、閉店中の従業員の雇用を維持してきた。業界団体の会長としては「行動制限が緩和されても、経済活動の回復が見通せるまでの一定期間、公的支援を続けるよう国への働き掛けを続けたい」と言う。
 休業中の今も、従業員と出勤してカクテル作りや会話力を磨いている。「銀座のお客さまは中高年が中心。事態が落ちついても出歩くのを控える人は多いかもしれない。それでも私たちは、銀座の文化といえる『本物のサービス』を守っていくしかない。そうすれば客足は戻ると信じて頑張るしかない」
 下落率が都内最大の10・1%だった新宿区歌舞伎町1丁目は、怪獣「ゴジラ」の実物大模型がある新宿東宝ビルの前だ。コロナ前は国内外の観光客でにぎわっていた。近くのホテルで働く女性も「稼働率はこの1年、3~4割」とこぼす。別のホテルの関係者も「宿泊料金を、コロナ前の3分の1に引き下げた」と打ち明けた。
 新宿エリアに詳しい不動産鑑定士の中原幸夫さんは「基準地周辺ではテナントの空きが目立つため、低い評価となるのはやむを得ない。賃料相場もコロナ前から1割以上下がっている」と解説する。

◆持ち直しの兆しも

 ただ、新宿の物件を扱う不動産会社の担当者は「最近は空き室が少なくなり始めた」と持ち直しの兆しを指摘する。自粛疲れで人出が増えていることが影響しているようだ。別の不動産業者も「接待を伴う小規模な飲食店の開業が活発になっている」と説明した。
 歌舞伎町商店街振興組合の杉山元茂理事長(68)は、「歌舞伎町には繁華街としてのポテンシャル(潜在能力)がある。人が戻らない不安はない」と話した。(井上靖史、中村真暁)

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