一輪車ダンス 世界への挑戦 国内初プロチーム、ユニサークル・フロー 米オーディション番組で準決勝出場

2021年9月22日 07時08分

「アメリカズ・ゴット・タレント」の準決勝で演技を披露する「ユニサークル・フロー」のメンバー=Fremantle提供

 今月五日の東京パラリンピック閉会式で、一輪車のダンスパフォーマーが祭典のフィナーレを盛り上げた。その数日後、国内初のプロの一輪車ダンスチーム「UniCircle Flow(ユニサークル・フロー)」が、米国の人気オーディション番組の準決勝に出場、エンターテインメントの本場で称賛を浴びた。「一輪車大国」日本の未来を切り開く挑戦とは。
 ロサンゼルスのドルビー・シアターの舞台。音楽とともに銀色の衣装をまとったユニサークル・フローのメンバー十二人が一斉に走りだした。その場でクルクルと回ると片足を高く掲げ、次の瞬間に一輪車ごとジャンプ。チアリーディングのようにメンバーを持ち上げる場面もあり、会場の審査員は立ち上がって拍手を送った。

準々決勝では赤い衣装で演技した=Fremantle提供

 今月八、九両日(日本時間)、米三大ネットワークの一つ、NBCテレビで放送された「アメリカズ・ゴット・タレント(AGT)」準決勝での演技だ。応募者が歌やダンス、コメディーなどさまざまなパフォーマンスを競い合う番組で、優勝賞金は百万ドル(約一億円)。ユニサークルは六月の予選、八月の準々決勝を勝ち抜き、この日に臨んだ。決勝の十組には残れなかったが、約二分間、全力で演技したメンバーには笑顔があふれた。
 メンバーは関東を中心とする十代後半〜二十代の男女二十五人。一輪車競技の国際、国内大会で優秀な成績を収めた精鋭ぞろいだ。今春に本格的な活動を始め、当面の目標に掲げたのがAGT出場だった。
 チームを率いるのは世界で活躍するダンスパフォーマー、「エビケン」こと蛯名健一さん(47)=多摩市。自身も二〇一三年の同番組で映画「マトリックス」をモチーフにしたロボットダンスなどを披露し、優勝している。

蛯名さん自身も驚がくのパフォーマンスで「アメリカンズ・ゴット・タレント」で優勝した=リンクエスト提供

 結成のきっかけは蛯名さんが昨年、オンラインで開催したパフォーマンス動画コンテスト「Like the BEST!(ライク・ザ・ベスト)」。そこで静岡城内一輪車クラブ(静岡市)メンバーの山本夏夢(なつめ)さん(24)と出会い、「一輪車の魅力を世界に発信しよう」と意気投合した。背景には一輪車界が抱える課題があった。
 「道具が普及している割にマイナーな競技で、一輪車で食べていくのは難しいんです」。日本一輪車協会事務局次長の下山和大(かずひろ)さん(38)が教えてくれた。協会は毎年、二千台を全国の学校に寄付するなど一輪車の普及に尽力。いまや小学校の九割に一輪車がある。競技人口は約一万人。各地にクラブチームがあり、大会で演技やスピードなどを競う。それでも一輪車競技を仕事にするのは困難で、高校や大学の卒業を機に競技から離れる選手も多いという。
 「選手が一輪車で生活できるようになれば競技の発展につながる。その第一歩」。蛯名さんはAGT挑戦の意義をそう語る。コロナ禍の影響もあり、今年のAGTの応募者は例年より少なめの約二万一千組だったとはいえ、準決勝進出はパフォーマンスが高く評価された証拠。番組出場後、米国やフランスなどから仕事の相談も寄せられた。

「ユニサークル・フロー」のメンバーと蛯名さん=リンクエスト提供

 AGTの予選には、パラ閉会式のパフォーマーも出場していた。川崎渡田一輪車クラブ(川崎市)のメンバー、玉橋美香さん(28)=神奈川県横須賀市=で、「『もっと世界に知られるべきだ』という審査員の言葉に感激した」と振り返る。予選、本戦の全てに出た新百合丘一輪車クラブ(川崎市)所属の高校三年、山本聖華(せいは)さん(17)=横浜市=は「さまざまなパフォーマンスを競った中で準決勝まで行けたことは自信になった。世界に向けて羽ばたきたい」と力を込めた。
 文・服部展和
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