ロシアがAI部隊を編成へ 主役は殺人ロボットと無人機の「魂なき軍隊」

2021年9月22日 12時00分

軍事演習ザーパド2021で配備されたロボット兵器「ウラン9」=ロシア国防省提供

 ロシアは、人間の判断を介さず敵を壊滅する部隊を編成する方針だ。「魂なき軍隊」と呼ばれ、人工知能(AI)を搭載した殺人ロボットと無人機(ドローン)が主役となる。兵士を大量投入する旧ソ連・労農赤軍からの戦術も刷新する。秋の軍事演習「ザーパド2021」で一端が明らかになった。(西部ニジニーノブゴロド州ムリノで、小柳悠志)
 演習場にある戦車型の装甲車両が、ロシア製のロボット兵器「ウラン9」。2キロ先の目標物を自動識別し、砲撃やミサイル発射を行う。
 演習は、国境を越えて攻め込んできた敵軍を撃退する想定。「兵士とロボットがどのように一緒に働くか試している」と軍広報官は語っており、現段階では人間が遠隔操作しているとみられる。

ニジニーノブゴロド州で、ロボット兵器などが投入された軍事演習「ザーパド2021」=小柳悠志撮影

 ロシアの独立新聞は、ウラン9をハリウッド映画のサイボーグの暗殺者「ターミネーター」に例え、10~15年後には完全に自律行動する可能性を伝えた。将来はミサイル発射などの決定もAIが行う見通し。
 同紙によれば、「魂なき軍隊」を主導するのはショイグ国防相。かつて非常事態相として原子力関連施設の汚染事故にロボットを投入した経験を踏まえ、人的資源である兵士を危険な場面から離す狙いだという。
 独立新聞の編集委員アレクサンドル・シャルコフスキー氏は「兵士の犠牲者が増えれば厭戦ムードが広がり、軍撤退を余儀なくされる。その点、無人攻撃は利にかなう」と説明。戦争の泥沼化による軍撤退の例として米軍によるアフガニスタンの対テロ戦やベトナム戦争を挙げた。

カリーニングラード州で、無人機「オルラン10」に並んで立つロシア兵=小柳悠志撮影

 AI兵器は感情に左右されず、誰かを殺しても良心の呵責はない。ショイグ国防相は5月、AI兵器の量産を始めたと発表しており、政府系ロシア新聞はウラン9がAI兵器に該当する可能性を報じている。
 空でも「魂なき軍隊」に向けた再編が始まった。パラシュートなどを用い、ソ連時代から花形とされる空挺部隊もドローン班を新設した。プスコフ州の空挺部隊員アンドレイさん(25)は「ドローンの導入で、人間の負担は減るので肯定的にとらえている。地形、天候を考慮してドローンを活用したい」と力を込めた。

◆ロシアと対立する国々も配備始める

 無人兵器は標的となる敵に甚大な被害をもたらす。先例となったのが昨年秋、アゼルバイジャンとアルメニアが軍事衝突したナゴルノカラバフ紛争だ。
 アゼルバイジャンはトルコ製のドローン「バイラクタルTB2」を投入し、アルメニアが実効支配する係争地ナゴルノカラバフの一部を奪還。アルメニアは、旧式のロシア製兵器で不利な戦いを強いられ、約4000人もの死者・行方不明者が出た。
 ナゴルノカラバフ紛争を機に、ロシアと対立する北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドは「TB2」を配備する方針を決め、ラトビアも関心を示している。親ロシア派武装勢力との戦闘を続けるウクライナもTB2を購入した。
 ロシアの軍事評論家フェルゲンガウエル氏によると、戦場でのドローンの大量利用は2006年、イスラエルがレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの軍事衝突で投入したのが始まり。その後、シリア内戦やリビア内戦を経て、北上を続けている。AIを搭載した自律型ロボット兵器も、リビアで投入された疑いがあることが国連の報告書で明らかになっている。

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