アメリカのワクチン完了率、日本に抜かれG7最低に 背景に根深い政治対立

2021年9月22日 20時26分
 【ワシントン=吉田通夫】米国の新型コロナウイルスワクチンの接種完了率が日本に抜かれ、先進7カ国(G7)で最低になったことが21日、研究者団体のまとめで分かった。バイデン政権は国民に接種を求めてきたが、対立する共和党支持層が抵抗しており、根深い政治的な分断を反映している。
 英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、米国で規定回数の接種を終えた人の人口に対する割合は20日時点で54.03%。日本の54.62%に抜かれ、G7で最低に転落した。2回の接種が必要なワクチンを1回しか接種していない「部分接種」を含めても63.04%で最低だった。
 バイデン政権は今年1月の発足以来、人員や会場などを整備してワクチン接種を加速。同月上旬に1日当たり100万人程度だった接種は、4月上旬には450万人に増えた。その後は急落し、6月以降は50万人を切る日もある。
 特に、民主党と対立する野党・共和党の支持層にワクチンへの反発が根強い。米NBCが8月に実施した世論調査によると、民主党支持者の88%が規定回数のワクチン接種を終えたのに対し、共和党支持者は55%にとどまっている。

◆「接種しない自由も認めて」の声も…

 米国の新型コロナウイルスワクチン接種率がG7で最低に転落した。伸び悩みの背景にあるのは、一部市民に強く浸透する接種や義務化への懐疑論だ。反ワクチン集会に足を運ぶと、「接種しない自由も認めてほしい」といった要求や「義務化こそ分断を生む」という主張まで、さまざまな声が聞こえてきた。(ニューヨーク・杉藤貴浩)

米ニューヨークで13日、ワクチン接種の義務化に反対して開かれた集会=杉藤貴浩撮影

 ニューヨーク市中心部の広場で今月中旬に行われたワクチン義務化に反対する集会「目覚めろニューヨーク」。平日午後4時開始にもかかわらず集まった数百人が、次々と登壇する演説者に耳を傾けた。参加者同士の距離はほとんどなく、ほぼ全員がマスクをしていない。演説者が「ワクチンを強いるな」と叫ぶと、拍手と大歓声が起きた。
 人々が手にするプラカードで目立つのは「自分の体のことは自分で選択する」。ワクチンの効果は否定しないが、政府による接種義務化には反対という立場だ。集会に参加した看護師サラさん(27)は「体に正体不明のものを注入されるのは不快だ。コロナ感染とワクチンのリスクをどう見極めるかは個人の権利の問題。ウイルスは防護具で防げる」と強調した。
 「もうコロナに感染したからワクチンはいらない」と訴える人もいた。事務職のミリアムさん(41)は「祖母もコロナになって亡くなったけれど、それは他の持病もあったから。私はまだ若いので十分な免疫を得た」と主張した。過去に感染した人でも感染力の強いデルタ株などに再感染する例が知られているが、「怖くない」と言い切る。

◆連邦職員の義務化賛成 民主84% 共和33%

 米国ではワクチンを巡る意見の違いが政治的な対立点にもなっている。世論調査会社イプソスなどの今月の調査では、連邦職員の接種義務化への賛成は民主党支持層で84%だったのに対し、共和党では33%にとどまった。
 集会には、こうした「反ワクチン」の世論を意識した選挙候補者の姿も。保守系テレビ番組でコメンテーターを務め、同市の会計監査役に立候補するジョン・タバコさん(53)は「バイデン大統領は接種義務化で、さらに国民を分断している。今日の参加者は、ワクチン強制に反対する自分に投票してくれると期待している」と話した。自身は接種を済ませたという。
 ワクチンを巡っては、科学的根拠のない陰謀論や誤情報の拡散も問題となっている。マサチューセッツ州の政治活動家デビッド・ロルデさん(54)は「コロナはでっち上げだ。(マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツと大手製薬会社が各国政府を乗っ取り、ワクチンを通じて人々を奴隷にしようとしている」と話した。
 バイデン氏は今月、未接種者に対し「あなたたちのワクチン拒否が(感染を再拡大させ)われわれ全員を犠牲にしている。正しく行動してほしい」と強い調子で接種を促している。

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