<民なくして>「今日を生きるので精一杯」大勢いる現状に目を 困窮女性、新リーダーに願い切実

2021年9月23日 06時00分

◆所持金は1円玉1枚と505円分の電子マネー

コロナ禍で住まいも職も失った経験をもつ反貧困ネットワークの女性職員=東京都新宿区で

 「しくった」
 昨年11月中旬、東京駅前。20代後半の女性は心の中でつぶやいた。 
 所持金は、1円玉1枚と505円分の電子マネー。飲まず食わずが3日間続き、靴には穴が開いていた。急に厳しくなった寒さが体にこたえ、夜は眠らず歩き回り、昼に駅前のベンチなどに座って仮眠した。
 困窮者支援の相談サイトにメールを送ったのは2時間ほど前。同時に相談メールを送った都の窓口からは「まず、電話を」と返信が来たが、携帯電話の料金未払いで通話できなかった。
 ふと見ると、相談サイトのメールを見た一般社団法人「反貧困ネットワーク」(新宿区)の瀬戸大作さん(59)が車で現れた。それで「しくった(しくじった)」。支援を断られたら死ねるじゃん、って思っていたから。誰かが助けてくれるなんて考えていなかった。
 車の中で瀬戸さんから「この先」の話をされて、涙が止まらなくなった。歩き過ぎで足が痛かったし、人に助けてもらわなければ、普通の生活を送れない自分が情けなかった。

◆生活保護受けられることを初めて知る

 勤めていた番組制作会社は、10日間帰宅できないこともあるほどブラックな職場だった。さらに父親が1人暮らしの自室や職場などに押しかけて暴力を振るったことも。仕事量がさらに増えたタイミングで急に出社できなくなり、退職。病院ではうつと診断された。
 家賃を払えず部屋を出た後は、派遣などで働きながら、ネットカフェや月決め賃貸マンションを転々とした。コロナ禍になるとその仕事も回ってこなくなり、収入が途絶えた。
 反貧困ネットとつながり、生活保護を利用できることを初めて知った。都内のアパートに入居し、現在は反貧困ネットの事務所で経理の仕事をしながらビジネススクールにも通う。
 以前は、不正受給というイメージも手伝って生活保護を頼る考えはなかった。「生活保護を義務教育で教えてもいいと思う。自分は大して困っていないと思っても、行政などに相談していいという発信がもっとあってほしい」と訴える。

◆「これまで国が何かをしてくれたのか」

 反貧困ネットを通じて、困窮した同世代の女性の悩みを聞くことが増えた。みんな非正規労働で働き、誰にも相談できずに生きてきた。総務省の調査によると、労働者のうち非正規職員・従業員が占める割合は、今年7月現在で15~24歳が47.9%、25~34歳が22.3%。「今の若者はこれまで国が何かをしてくれたのか、という思いがある」と痛感する。
 自民党総裁選の喧噪が伝えられる中、次の日本のリーダーにこんな願いを託す。「今日を生きるので精いっぱいの人が大勢いる現状に、まずは目を向けてほしい」(中村真暁)

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