<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>国や都との交渉も 落語芸術協会事務局長・田澤祐一さん 

2021年9月24日 07時06分

落語芸術協会事務局長・田澤祐一さん

 落語家の春風亭昇太(61)が会長を務め、柳亭小痴楽(こちらく)(32)や桂宮治(みやじ)(44)、神田伯山(はくざん)(38)ら若手芸人の台頭が著しい公益社団法人落語芸術協会。その事務局長として長年、組織の要になって芸人を支えてきたのが田澤祐一さん(61)だ。
 一九八五年に事務局入り。「その二年後、二十七歳で三代目事務局長になりましたけど、スタッフは三人だけ。以降、桂米丸、桂文治、桂歌丸、そして現在の昇太会長に仕えてきました。ここまで来られたのは運がよかったから」としみじみと振り返る。 
 現在、前座含めて会員数二百八十人超、年間予算約四億円の組織を、八人の事務局体制で支える。「事務局が整い、確立できたなと思えたのは四十五歳を過ぎた頃。二十年かかりましたね」
 理事会(年四回)、総会(年一回)、研修会(夏と冬)の開催、新真打ち昇進の記者会見設定や各種メディア対応など、業務内容は多岐にわたる。寄席のトップとは重要事案を決定する際に“席亭交渉”をし、会員家族から依頼があれば弔いの手伝いもする。
 「なかでも最も重要な仕事は、寄席の出演者を決める“顔付け”をし、急な休みを埋める“代演”を決め、“割(わり)(出演料)”を分配することです。若い時分にこれを一手にやることができた」と、演芸業界で“Mr.事務局長”と一目置かれるようになった力の源泉を、そう明かす。

桂歌丸師匠(右)と田澤事務局長(1987年)

 内部のマネジメントの一方、文化庁や東京都との交渉役も事務局長の仕事だ。各種支援政策を活用し、巡回事業などを数多く立ち上げることに成功した。
 分厚い申請書類を見ながら、「落語を広める地方公演などを提案して、予算をつけてもらい、協会員の仕事にもつながった」と、場の創造に奮闘できたことに胸を張る。
 昨年四月、脳梗塞で入院した。その前から「引き際」を昇太会長に伝えていたが、瞬く間に「ちょっと待て」の声に包囲されたという。事務局長の看板を下ろせる日は、まだ先になりそうだ。 (演芸評論家)

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