ハイチ移民がアメリカ国境に殺到 大統領暗殺、大地震…バイデン政権の本国送還方針に批判

2021年9月24日 20時52分
米・メキシコ間のリオグランデ川を渡って米国入りを目指すハイチ移民ら=AP

米・メキシコ間のリオグランデ川を渡って米国入りを目指すハイチ移民ら=AP

 【ニューヨーク=杉藤貴浩】米南部国境にカリブ海の島国ハイチからの移民希望者が大量に押し寄せ、政治問題化している。バイデン政権はハイチへの送還などを進めるが、同国は大統領暗殺や大地震で政情不安と困窮を極めており、人道面から批判が拡大。23日には米国のハイチ担当特使が政権への抗議とみられる辞任を表明し、混乱に拍車がかかった。
 南部テキサス州のメキシコ国境には、今月中旬ごろからハイチ出身の移民希望者が殺到。米メディアによると、当初の数百人から最大1万4000人程度に膨れ上がった。

◆馬に乗って追い返す米警備隊に反発

 同州デルリオでは多くが橋の下で野宿生活。米国境警備隊が入国を図る人々を馬に乗って追い返す模様が報じられると、人権団体などは「奴隷制時代の黒人取り締まりを思い出させる」などと激しく反発した。以前からバイデン政権の国境対策を攻撃する共和党だけでなく、与党民主党からも若手有力下院議員のオカシオコルテス氏が「国の汚点」と表明するなど批判が相次いだ。一方で同州のアボット知事(共和党)はバイデン政権にさらなる対策強化を求め、独自に国境沿いに不法移民の流入を防ぐ車列を配置している。

◆米政権内にも「送還は非人道的」の声

 ハイチでは犠牲者30万人以上を出した2010年の大地震で大勢の国民が他の中南米諸国へ流出。移住先で生活に行き詰まり、トランプ前政権より移民に寛容とされたバイデン政権の発足で米国を目指すようになったとみられる。さらにハイチでは今年7月にモイーズ大統領が暗殺され、8月には再び大地震が発生。新たに米国を目指す流れが強まった。
 バイデン政権は、こうした移民希望者を新型コロナウイルス対策を理由として航空機などでハイチへ送還しているが、同国は以前から「西半球の最貧国」とされるだけに、根本的な問題解決にはほど遠い。ハイチで地震後の復旧活動に従事する社会活動家キンスリー・ジャンさん(24)は本紙の電話取材に「この国では犯罪組織が横行するなど、誰も安全でいられない。米国が人々を送り返すことは、人道的にも経済的にもハイチに多大な悪影響を及ぼす」と批判した。
 こうした状況を受け、バイデン政権でハイチ政策を受け持つダニエル・フット特使は23日、「送還は非人道的で非生産的だ」となどとして突然の辞任を表明。政権内部でのあつれきも露呈している。

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