朝鮮戦争の「終戦宣言」 韓国大統領なぜ今提案? 南北それぞれ思惑絡み…

2021年9月25日 06時00分
 韓国の文在寅ムンジェイン大統領が、朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言を提案したことに対し、北朝鮮側は反発しつつも「興味深い提案」と一定の理解を示した。背景には重要政策に据えてきた南北融和の「レガシー(遺産)」にしたい文氏と、揺さぶりをかけて対話の主導権を握り、支援を引き出したい北朝鮮の思惑が交錯している。(ソウル・中村彰宏)

◆政治的成果もくろむ文氏

21日、米ニューヨークでの国連総会で演説する韓国の文在寅大統領=AP

 文氏は21日の国連総会の演説で、南北と米国の3カ国、あるいは中国を加えた4カ国での終戦宣言を提案。帰国する大統領専用機内で、米国、中国の同意を得たと記者団に明かし、「もう戦争を終え、平和交渉に入るという一種の政治的な宣言だ」と強調した。
 朝鮮戦争は53年に米国を中心とする国連軍と北朝鮮、中国の間で休戦協定が結ばれたが、終戦には至っていない。南北融和を重要政策に据えてきた文氏は、2018年4月の南北首脳会談はじめ、終戦宣言の構想を度々唱えてきた。来年5月の任期終了を控え、南北関係での政治的成果をもくろむ。
 北朝鮮は今月、相次いでミサイル発射に踏み切ったが、文氏は国連演説で言及しなかった。大陸間弾道ミサイル(ICBM)など過度な挑発は避ける北朝鮮を「対話の扉を開いたまま、いろいろ考慮している」と、配慮する姿勢を見せた。

◆北は支援要求のカードに?

北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長=AP

 文氏の提案に対し、北朝鮮のリ・テソン外務次官は23日付の談話で「米国の敵視政策が変わらない限り、終戦を100回宣言しても変わるものは一つもない」と拒否。一方、北朝鮮の金正恩キムジョンウン朝鮮労働党総書記の妹、金与正キムヨジョン党副部長は24日、朝鮮中央通信を通じた談話で「わが国に対する二重の基準と偏見、敵視政策が続いている」と批判しつつも、「敵対的でなければ、いつでも関係回復や発展の建設的な議論をする用意がある」と理解も示した。
 韓国・慶南大極東問題研究所の林乙出イムウルチュル教授は「批判や無視一辺倒ではなく、終戦宣言の条件を整えてほしいと要請した点は、以前よりも進展した」と評価する。北朝鮮は、米韓が弾道ミサイル発射を批判し、合同軍事演習や韓国の国防力強化を進めることに強く反発。一方で新型コロナウイルスなどで経済は苦境に陥っている。二つの談話は対話再開の前提として敵視政策の撤回と、経済制裁の解除を求める意図がにじむ。

◆北京五輪が好機か?

 残り任期の少ない文氏にとって、南北関係改善の最後の好機ととらえるのが来年2月の北京五輪だ。文氏は今月中旬、訪韓した中国の王毅外相との会談で、「北京五輪が北朝鮮との関係を改善する転機となることを望む」と述べた。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、東京五輪に参加しなかった北朝鮮に22年末までの資格停止処分を科しており、選手団の派遣は難しい状況。ただ、韓国内では正恩氏が友好国の首脳として五輪開催を祝うため訪中するとの見方もあり、韓国政府は五輪に合わせた南北首脳会談を模索する。
 文氏は「関係進展の機会があれば最後まで努力することが政府の責務」とも述べており、次期政権に南北融和の流れを引き継がせたい思惑もありそうだ。

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