<社説>中台TPP申請 理念は共有できるのか

2021年9月25日 07時14分
 日本など十一カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP)に中国が十六日、台湾が二十二日に加盟を申請した。TPPは高い水準の貿易・投資の自由化を目指す国際的な経済の枠組みである。中国は経済活動への統制を強めており、TPPの理念を共有できるのかどうか疑問がある。
 中国が申請に踏み切った最大の理由は対米戦略であろう。米国のTPP不参加に乗じて、アジア太平洋地域の経済運営やルール作りで主導権を握る狙いがある。
 加盟に意欲を見せていた台湾の加盟阻止に先手を打つ意図もあった。台湾の申請に日本の外相らが「歓迎」の意を示したが、中国政府は「断固反対」を表明した。
 国内的には、習政権が昨年打ち出した「双循環」と呼ばれる成長戦略を推進する意図があろう。これは、内需主導型の成長と世界経済の中国依存度を高めることで、二〇三五年までに国民の所得を倍増させようとの戦略である。
 加盟には、貿易・投資の自由化はもちろん、データ管理や労働条件についてのルール順守や透明性の確保が求められる。台湾当局は申請にあたり「我々は完全に市場主義だ」と強調し、TPPのルールを守ることに自信を見せた。
 一方、中国の実態はどうかと見れば、国有企業への優遇策が強化され、民間企業の自由な活力が損なわれる「国進民退」の弊害が大きくなるばかりである。
 新疆(しんきょう)ウイグル自治区での強制労働に対する国際社会からの批判には「内政干渉」と反発し、国連の調査も受け入れようとしない。
 加盟には全加盟国の承認が必要という高いハードルがある。中国は自国の参加に理解を示すシンガポールが二二年に議長国になるのを、今後の交渉の好機ととらえたかもしれないが、加盟国のオーストラリアやベトナムが中国と経済摩擦や領土紛争を抱えており、加盟交渉は難航が予想される。
 中国が加盟すれば、TPP加盟国の国内総生産(GDP)が世界経済で占める割合は現在の一割から三割に上昇する。TPPの影響力アップを期待する声もあろう。
 しかし、今年の議長国である日本は、中国がTPPのルールを守る国たりえるかどうか、公正な議論を主導してほしい。
 国内産業保護を重視しTPPから離脱した米国は、自由貿易を守るため早期復帰を図るべきだ。

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