<月刊 SDGs 2021年9月号>ごみが減る 量り売りスーパー

2021年9月25日 07時55分
 国連のSDGs(持続可能な開発目標)の目標12は「つくる責任つかう責任」。昔懐かしい量り売りを、包装や食品ロス削減のため復活しようという動きがじわりと広がっている。消費者の「つかう責任」の選択肢を増やす挑戦だ。
 株式会社「斗々屋(ととや)」(京都市)は今夏、京都市にオーガニック食材や日用品を量り売りするスーパーを開店した。2019年から都内のモデル店舗などで量り売りのノウハウを蓄積し、今年から東京都国分寺市のカフェで専門店「nue by Totoya」を営む。
 国分寺の店舗はナッツ類や調味料などが中心だが、京都では納豆やうどんも販売する。広報担当のノイハウス萌菜さん(28)は「理解してくれる業者と一緒に、ゼロウェイスト(廃棄物ゼロ)な納品の方法を、編み出している」と話す。
 納豆は大正時代創業の藤原食品(京都市)が金属製の弁当箱で製造する。4代目の藤原和也社長(42)によると、水分が蒸発しないよう製造することに苦労したという。販売実績は予想を上回る。「ごみ問題を気にしていた人が思ったよりもいた。斗々屋に声を掛けてもらわなければ容器を循環型にするとか考えなかった。うちとしてはプラスでしかない」

◆納豆 うどん 獣害の鹿肉 業者と一緒に納品工夫

使い捨て容器を使わず、弁当箱で製造された納豆=京都市で

 鹿肉を卸す株式会社RE−SOCIAL(京都府笠置町)は笠井大輝さん(23)ら3人が大学4年生の時に起業した。
 シカやイノシシなどの獣害を研究していて、木が立ち枯れし、農家が意欲を失うなど、被害の深刻さを知った。駆除された動物のほとんどが山に放置されることにも衝撃を受けた。スーパーでは総菜などの形で販売されている。「山で捨てられていたものが流通していく。理想の形」と喜ぶ。
 斗々屋では量り売りの店を始めたい人たちに向けたオンライン講座も開いている。「情報を共有することで社会の変化を加速したい」(ノイハウスさん)との思いからだ。
 川口陽子さん(28)は昨年、講座を受けて、愛知県春日井市の築130年の祖父母の家を改装し、量り売りを始めた。インスタグラムを見て遠くから訪れる客もいる。「今後は地元の野菜なども仕入れたい」という。
 販売する人と生産者の思いが同調し、点が線へとつながっていく。消費者の行動が、動きを広げる後押しとなる。 (早川由紀美)

◇産廃業者が里山を再生 減量&リサイクル98%

◆「石坂産業」社長・石坂典子さん

「ごみになることを考えたものづくりが必要」と話す石坂典子社長=埼玉県三芳町で(写真は石坂産業提供)

 埼玉県三芳町(みよしまち)で「石坂産業」の石坂典子社長(49)は、里山再生に取り組むなど産業廃棄物処理業のイメージを一新する改革を続けています。江戸時代から屋敷地と耕地、雑木林が一体となった循環型農業が盛んだったこの地域は、一時期「産廃銀座」と呼ばれました。石坂さんは、廃棄物ゼロを実現するには社会のデザインを変えていく必要があると指摘します。その道筋を一緒に考えました。 (聞き手・早川由紀美)
 -ダイオキシン問題(注)で産廃業者が逆風にさらされる中で2002年、父親が創業した石坂産業の社長となり、里山再生など、SDGsにつながる取り組みも始めました。
 「環境事業者としてちゃんと社会に認められるための取り組みが必要でした。父親は前回の東京オリンピック(1964年)の時に埋め立てをしない社会をつくりたいという夢を目指し、会社をつくりました。その理念を可視化していく必要がありました」
 「里山の管理を通じて私たちも自然の摂理から学ぶことが多い。廃棄物の処理以外のプロセスを知ることになりました。一日に700人、800人と遊びに来てくれて会社の周辺がにぎわって、私たちが目指すものが何かを知ってもらう機会になりました」

◆循環型へ「社会のデザイン変える」

 -石坂産業の減量化・再資源化率は98%ですね。どうしてもごみになってしまうものは何ですか。
 「複合的な化学物質です。家などももっと強固にとかいろんなことを望めば化学物質が多く使われる。SDGsが目標12で製造者や消費者の責任を問うたことは意味があると思っているんです。水も含め、人類が天然資源を枯渇させてしまう危機にわれわれは直面している。プラスチックはとても長い間、分解されない。ものづくりから変えていく必要があるのです」
 「戦後の高度成長は生産して捨てる一方向のプロセスだった。設計ミスの社会です。それは自然の循環とは異なる形で、持続可能ではありません。社会全体のデザインを再構築することが、人類が生き残ることができる道です」
 「工場見学に大勢訪れてもらっていますが、そのことがきっかけでものの作り方が変わったり、子どもたちが将来、クリエーターになったりするわけですよ。スポーツ用品メーカーのアディダスが同一素材で靴を作るなど、ごみになることを先に考える動きが生まれています。そういう商品が生み出されるようにするのは、買い物をする人の役割でもあります。個包装を求めないとか、量り売りを復活させるとか、消費者のできることは多くあります」

三富今昔村で田植えする子どもたち=2019年ごろ、埼玉県三芳町で

◆価値に共感 社員の半分が20、30代

 -社員が学校に通うことを支援し、目標8の「働きがいも 経済成長も」も重視しているように感じます。
 「働く人への感謝の一つです。私たちの仕事はものを作る豊かさとは違い、廃棄するマイナスの仕事です。それを理解した上でやってくれています。働き手が少なくて困っているとされている業界で20代、30代が約半分を占めている。社会的な意義や未来への価値に共感して、大学や大学院を卒業した人が来てくれているのです」
 「若手がどう成長していくのか、目的や目標をそれぞれ設定してもらっています。挑戦したいものがあれば学校に行かせたりする制度もあります。重機の操作など、もともと経験があって来ているわけではなく、会社に入ってから必要な資格を取っているんです。大学院を修了した女性もいました。個の成長が会社の成長につながる。1人のリーダーの指示に従うというのではなく、それぞれの社員がミッションや役割を認識している、そういう働き方であってほしいと思っています」
※(注)ダイオキシン問題 1999年2月、埼玉県所沢市の野菜から高濃度のダイオキシンが検出されたとテレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」が報道。同市産の野菜の入荷中止や暴落が起こり、地元では産廃処理業者の立ち退きを迫る反対運動が起きた。農家がテレ朝を相手取った訴訟では、テレ朝が報道の誤りを認めて謝罪するなどの内容で2004年に和解が成立した。 
<いしざか・のりこ> 1972年東京都練馬区生まれ。高校卒業後、デザイナーを目指し米国へ留学後、父親が創業した石坂産業に入社。2002年、社長就任。手作業を含めた徹底した分別や、最新技術導入で、減量化・再資源化率は98%となっている。工場周辺の不法投棄で荒廃した雑木林を里山に再生し、カフェや雑貨ショップ、水田などを併設した「三富(さんとめ)今昔村」を運営している。

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