手を挟んだまま発車の事故を検証、再発防止へ 車掌が視覚障害者と気付かず合図 

2021年9月27日 05時50分
 神奈川県横須賀市の京急久里浜駅で7月、目が不自由な男性の指を扉に挟んだまま電車が発車する事故があり、手探りで扉を確認する男性の姿を、車内に手を振っていると車掌が勘違いしたことが原因であることが、京急電鉄への取材で分かった。同社は事態を重視し再発防止に乗り出した。視覚障害者らは「乗車時の行動について広く知ってもらい、注意してほしい」と訴える。(加藤益丈)

◆手で扉の位置を確認

 事故発生は7月26日午後1時ごろ。同社によると、視覚障害のある60代男性が、三崎口発青砥行き快特電車(8両編成)の扉を右手で探していた。ホームはカーブしておりホームドアはなかった。車掌はモニターで男性を確認、見送りで手を振っていると思い込んで、電車から離れるよう放送して扉を閉めた。その際に男性の右手指が挟まった。
 電車は扉に物が挟まって1センチ以上開いていると動かない仕組みだが反応せず、車掌は気付かないまま出発合図を送った。発車して間もなく男性の指は扉から抜け、弾みでホームに転倒、頭と腰に軽いけがをした。直後に電車は停止した。男性は白杖を持っていたが、車掌は視覚障害者と気付いていなかったという。
 同社は事故直後の調査で経緯を把握。「閉扉後、点字ブロックと電車の間に人が立ち止まっていたら出発の合図をしない」「視覚障害者の乗車方法について教育を定期的に行う」などの再発防止策をまとめた。
 国土交通省の担当者は「視覚障害者は白杖や手で扉の位置を確認しているが、知らない鉄道事業者があるのは事実」と話す。同省は鉄道各社に社員教育の充実を促すという。

7月に事故があった京急久里浜駅。発車時に車掌が立つ位置には、離れた場所を見るためのモニター(右上)がある

◆「駅員に案内してもらう仕組みを」

 視覚障害者が電車に乗り込む方法はさまざまだ。事故防止には鉄道事業者だけでなく、周囲の乗客の理解や手助けも重要となる。
 「点字ブロックをたどり、扉の前の位置で待つ。電車が止まり、扉が開いたと思ったら、足を出すところに杖を出し、とんとんと確認してから乗り込む」。全日本視覚障害者協議会代表理事の山城完治さんは、自身の乗車方法を説明する。
 東京都豊島区盲人福祉協会事務局長の市原寛一さんは、「扉の中央に手を入れると挟まれる恐れがあるから、扉の脇のボディーと思ったところに、ひじを当て、扉の内側の手すりを手首で確認し、乗り込んでいる」。
 山城さんは「特にホームドアのない駅では、駅員に案内してもらえる仕組みを作ってほしい」と提案。市原さんは、車掌だけでは確認に限界があるとして「乗客の方に『ドア、こっち』と言ってもらえるだけで対応できる」と訴える。
 視覚障害者に安全な歩き方を学んでもらう「日本歩行訓練士会」(大阪市)では、電車利用の際に白杖で扉があるか確認するよう指導している。ただ扉のないところに立つ場合、今回の男性のように手で車両側面をつたいながら扉の位置を探すこともあるという。事務局長の堀内恭子さんは「事故を防ぐには、視覚障害者の行動特性を知ることが大切」と指摘する。

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