東山魁夷や平山郁夫作品などの偽版画を制作、販売の疑い 元画商と工房経営者逮捕

2021年9月27日 20時40分
 東山魁夷かいいさんや平山郁夫さんら日本を代表する有名画家の偽作版画が流通した問題で、警視庁生活経済課は27日、著作権法違反の疑いで、元画商加藤雄三(53)=大阪府池田市=と、版画工房経営北畑雅史(69)=奈良県大和郡山市=の両容疑者を逮捕した。
 同課によると、加藤容疑者の預金口座から約6億2000万円が見つかった。偽版画を販売した収益が含まれているとみられ、口座は凍結された。知り合った2010年ごろから、2人が偽版画の制作や販売を継続していたとみて調べる。
 逮捕容疑では17年1月〜19年1月、東山さんの著作権者の許諾を受けずに「草青む」などの5作品の偽版画計7点を複製したとされる。同課は2人の認否を明らかにしていない。
 日本現代版画商協同組合(日版商)によると、不自然に多く出回る版画作品があったことから、昨春に調査を開始。昨秋、加藤容疑者に事情を聴いたところ関与を認めた。
 日版商は、東山さん、平山さん、片岡球子さんの10作品の偽作が確認されたとして警視庁に相談し、同庁が加藤容疑者の関係先などから約80点の版画を押収した。同庁の鑑定で、東山さんら3人の作品などを偽作と確認。ピカソら海外の画家6人の作品も押収したが、真贋しんがんは確認できていないという。
 問題発覚を受け、画商らで設立した「臨時偽作版画調査委員会」が、美術品鑑定の専門機関「東美鑑定評価機構」に10作品の鑑定を依頼。5月までに201点のうち120点が偽作と確認された。

◆関連作品値下がり、美術品販売の百貨店も打撃

 「心無い行為で、大変大きな被害が多くの方に生じている。捜査に包み隠さずに全てを話してほしい」。2人の逮捕を受け、27日に会見した臨時偽作版画調査委員会代表の青木康彦・日版商理事長は、苦渋の表情で語った。
 日版商の専務理事だった加藤容疑者は昨年12月、偽版画への関与を認め、除名処分にされた。青木氏は偽造防止策として鑑定済みの作品には真作・偽作を判別できるシールが貼られていると説明したが、鑑定を受けていない版画作品が数多く出回る現状に「今後の検討課題として取り組みたい」と答えるしかなかった。
 大量の偽作版画が市場に出回った影響は大きい。画商の男性によると、絵画の取引で、日版商が偽版画を確認した10作品は、値が付かなかったり、発覚前の3分の1、5分の1の値段しか付かなかったりしたという。「コロナで商売がやりにくくなる中、画商の経済的なダメージは大きい」と声を落とす。
 美術品を販売する百貨店も打撃を受けた。大丸や松坂屋を運営するJ・フロントリテイリングは、偽版画と確認した10作品を数十点販売し、うち偽作と鑑定されたものの返金を進め、版画販売は原則中止した。高島屋は販売した数点の返金を終え、版画は作家または作家指定の版元の作品のみを扱うようにした。
 美術評論家の藤田一人さんは「日本では複製版画の流通や鑑定がしっかりしてこなかった面がある。版画の扱いを明快にする機会とするべきだ」と指摘する。(山田雄之、佐藤大)

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