人工肛門 ためらわないで 内田春菊さん、闘病経験を脚本に 10月舞台 がん患者たちの人間模様を笑い交え

2021年9月28日 10時26分

「がんの治療もその後の生き方も自分で決める時代」と話す内田春菊さん=東京都豊島区で

 漫画家内田春菊さん(62)は六年前に大腸がんが見つかり、治療により人工肛門になった。闘病や人工肛門での生活について漫画でも赤裸々に描いてきた内田さん。今度は、今秋上演される演劇に脚本を書き下ろした。自身のがん闘病生活を下敷きに、話題にしにくく避けられがちな人工肛門のリアルも織り込んだ作品という。 (小林由比)
 「内田さんみたいに、ケロケロッとしている人にぜひ、(人工肛門の)啓発冊子に出てほしい、って主治医に言われたりするんですよ」。今はこう言って笑う内田さんに大腸がんが見つかったのは二〇一五年末。抗がん剤治療の後、一六年四月にがんの切除とともに肛門も切除し、人工肛門を設けた。
 手術前から一時的か永久的か分からないが、「人工肛門になります」と伝えられていた。「私だってすごくびっくりしましたよ。何も知りませんでしたから」
 人工肛門は手術でつくられた排せつ口のこと。直腸がんの手術で直腸と肛門を切除する場合や、大腸がふさがって便が通過できない場合、大腸や小腸をおなかの表面に直接出し、便やガスの出口に使う。人工ぼうこうと共に「ストーマ」とも言われる。ストーマのある人たちはオストメイトと呼ばれ、全国に約二十万人いるとされる。
 人工肛門には、直腸のように排せつを調節する働きはない。そこで、排せつ物を受けとめる袋を人工肛門につけ、排せつ物がたまったら捨てる生活となる。
 内田さんのがんも肛門に近い直腸にあったため肛門をやむなく切除。この先ずっと人工肛門を使うことになった。突然の体や生活の変化に落ち込んだり、笑ったりと試行錯誤する様子を漫画「すとまんが」につづった。医師の監修も得て、人工肛門の仕組みや装具の選び方など「そもそも」も平易に伝えている。
 装具もめざましく進化。袋を取り付ける土台部分も含め、素材やデザインも多様という。「お風呂は、とよく聞かれるけど、今の私の装具はドボンと入っても問題ない」
 しかし、一般的に人工肛門への抵抗感はまだ残る。「『そんなことになるくらいなら』とか、ためらっているうちに手遅れになる人もいると聞いた」。内田さんが漫画などで伝えるのは、そんなケースをなくしたいからだ。
 十月に劇団うずめ劇場が上演する「がん患者だもの、みつを」の脚本は、内田さんが初めてがんをテーマに書いた。人気バーチャル・ユーチューバーと乳がんにかかった同僚という女性同士の一風変わった友情を中心に周囲の人間模様を描く。大腸がんの患者で人工肛門の男性も登場。内田さん特有の毒舌やハチャメチャを盛り込みつつ、力強く生きる女性たちが印象的。「そうじゃないだろ、っていう突っ込みどころもいっぱいですが、お客さんが笑ってくれたらうれしい」
 ◇ 
 「がん患者だもの、みつを」は十月六〜十日、東京都新宿区中落合のシアター風姿花伝で。前売り四千五百円、当日五千円(学生三千円)。期間中、上演後にゲストを招き、内田さんがトークを繰り広げる。七日には、人工肛門を一時的に経験したフリーアナウンサー中井美穂さんを招く。詳しくは劇団のホームページで。

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