緊急事態宣言の全面解除「待っていた」「でも感染の再拡大が…」 飲食業界など歓迎と不安が交錯

2021年9月29日 06時00分
 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が来月1日に全面解除される。「待っていた」「でも感染の再拡大が心配」。長引く売り上げの低迷に苦しむ飲食や観光業界から上がる声には、解除への歓迎と不安が交錯する。(加藤益丈、宮本隆康、奥野斐、望月衣塑子)

緊急事態宣言解除後の営業に向けて、ビールを注ぐグラスを磨く秋山隆さん=東京・永田町の「よなよなビアワークス赤坂店」で

◆感染状況「このまま推移してほしい」

 「ずっと待っていた。うれしい」。東京都千代田区永田町のビアレストラン「よなよなビアワークス赤坂店」支配人の山科秀哉さん(42)は声を弾ませる。
 昨春以降、コロナ禍で近隣の企業がテレワークを進めた影響か、アルコール類を提供できた期間も客足は減っていた。緊急事態宣言下の今月、ネットで予約してくれた人に「酒を出していない」と伝えると、すぐキャンセルされる苦い経験も味わった。
 都から感染対策の認証を受けており、10月からアルコール類を提供できる見込みだ。「常連客が戻るきっかけに」と、希少なクラフトビールも出す。ただ感染の再拡大で年末に酒を出せなくならないかと心配だ。「このまま推移してほしい」と祈るように語った。
 台東区蔵前で酒店を営む関明泰あきやすさん(42)には、飲食店から在庫の問い合わせが来るようになった。浅草に近く、飲食店向けの売り上げが約9割。酒類の提供自粛で売り上げは落ち込み、店内で昼食やコーヒーの提供を始めていた。「まだ営業時間の短縮は続くし、どれだけ仕入れればいいか、飲食店は様子を見ているようだ。配達などのアルバイトをこれから募集するが、また感染拡大したら、雇った人員をどうするか…」と不安ものぞかせる。
 渋谷区で食べ歩き向けの唐揚げなど軽食を販売する60代の女性店長からは「宣言解除で気は楽になるけど、すぐ人が戻るか…。売り上げは9割減で家賃も払えないのに、協力金は全然支払われない」と不満も。

◆「来春までに外国人が旅行できるように」

日本各地の外国人観光客向けのパンフレットを示す澤新さん=27日、東京都台東区で

 「解除はありがたいが、すぐには元のように戻らないし、再拡大も心配」。レトロな街並みの「谷根千やねせん」の一角、台東区谷中の「旅館さわの屋」の澤新さわあらたさん(53)は浮かない表情。宿泊客の9割を占めた外国人観光客が消え、日帰り旅行に活路を求めて風呂や部屋の時間貸しを始めた。だが売り上げは回復途上で以前の3〜4割。「来年、桜が咲く頃までには外国人が旅行できるように」と願う。
 買い物や観光で若者らに人気の東京・原宿。メインストリートの竹下通りでは「テナント募集」と紙が貼られたシャッターも目立つ。35年以上続くアパレルショップの店員正林まさばやし竜也りゅうやさん(30)は「売り上げはコロナ前の6割ほど。若い子たちは、親に行くのを止められているのかも。宣言が明けて人が増えてくれたら」と期待する。

◆医療関係者「第6波に備えて」

 医療関係者からは、新規感染者数が減ってきたこの時期に、態勢を立て直すべきだとの意見も。
 中央区でクリニックを開く医師の青木正美さん(63)は「いまの感染状況から、制限の緩和は選択肢の一つだと思う。今後予想される第6波に備えて、PCR検査の徹底や大規模仮設病床の開設、隔離施設の準備などを進めてほしい」と注文を付けた。

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