海底に積もる石灰、灰色に染まるアザラシ…日中韓向け石炭輸出増に沸くロシア極東の影で公害が深刻化

2021年9月29日 11時30分

日中韓向けの石炭が積み出されるナホトカ港

 ロシア極東で、東アジア向けの石炭輸出が伸びている。港の荷役会社がバブル景気に沸く一方、石炭の粉末が市街に飛び散り、公害が深刻化している。「時代遅れのエネルギー」と呼ばれる石炭が、なぜ引っ張りだこなのか。(ロシア沿海地方ナホトカで、小柳悠志、写真も)

◆東アジアの需要増…荷役会社は好調に声弾ませ

 「石炭の売れ行きは好調。一時保管場所はいくら作っても足りない」
 ナホトカ港の荷役大手アスタフィエワ社のアレクサンドル・ガニン執行代表は声を弾ませた。
 オフィスはIT企業を思わせるモダンなしつらえ。スポーツジムも設けられ、外では最新鋭の重機が行き交う。同社はソ連崩壊後、水産加工で切り盛りしてきたが2001年ごろから石炭の荷役が中心に。ここ数年、石炭の取扱量は前年比2割増しで推移し続ける。

石炭の取扱量は年々増えていると話すアスタフィエワ社のガニン執行代表

 シベリアの炭田で掘り出された石炭は、鉄道貨物でナホトカへ。港の岸壁で船に積み替えられ、中国、日本、韓国に運ばれる。

◆地球温暖化の「元凶」でも

 火力発電などに使われる石炭は二酸化炭素(CO2)を多く排出し、地球温暖化を引き起こす「元凶」とされ、欧州では今や再生可能エネルギーが主力だ。
 そんな話題をぶつけるとガニン氏は肩をすくめた。「でも現実は見ての通り。東アジアの石炭需要は伸び続けているんですよ」

アスタフィエワ社のオフィスを案内するガニン執行代表(右)

 中国では6月、石炭が過去最高水準の高値に達し、「経済成長の足かせになる」と報じられた。ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)を生み出すマイニング(採掘)作業などで電力消費が増えたことが一因だ。
 石炭は発電燃料のほか製鉄(コークス)の原料にもなり、日本からの引き合いは底堅い。日本のエネルギー白書によると、石炭の輸入量はここ5年以上、年1億8000万〜2億トンと過去最多レベルで推移している。

◆粉塵に包まれる家々や大地

アスタフィエワ社が新設した環境対策ラボラトリー

 ナホトカの荷役会社が「この世の春」を謳歌(おうか)する一方、住民は公害に苦しむ。岸壁に置かれた石炭は冬の強風で市街地に飛び散り、森や川も家々も粉じんに包まれる。タクシー運転手のユーリーさん(47)は「昔は漁業の街だったのに、海水が汚れて魚が食えなくなった」と不満を漏らす。
 4年前には、ナホトカの少年がテレビ番組でプーチン大統領に石炭が飛散する実態を直接訴え、公害が明るみに。現地報道によると、ナホトカ湾の海底には数十センチの石炭の粉が積もり、白い体表のアザラシは灰色に染まった。
 アスタフィエワ社は2年前、社内に環境対策ラボラトリーを新設。石炭置き場に高さ20メートルの柵を巡らせ、覆い付きのベルトコンベヤーを導入するなど石炭の飛散防止に努める。ただ、こうした還元は一部。環境対策費を惜しみ、行政指導を受ける荷役会社もある。

関連キーワード


おすすめ情報

国際の新着

記事一覧